ふたつの弧が、重なるとき ~元エースピッチャーの彼と、走り高跳びの彼女。熱を持った六年越しの初恋を、不器用に重ね合わせていく~【完結】
脳裏に蘇るのは――中学二年の冬の光景。
部活帰りの夕暮れ時。
吐く息が白く凍るような寒い日だった。
友達と別れ、商店街のアーケードを抜けた先、駅前のイルミネーションが煌めく雑踏の中で、僕は見てしまったのだ。
手を繋いで歩く、ひと組の男女を。
(…………彼女だ)
制服の上にベージュのダッフルコートを羽織り、柔らかそうな白いマフラーを巻いて歩く女の子は、森美絵だった。
その隣には、背の高い男がいた。
制服のズボンからして、市内の進学校に通う高校生だろうか。
彼女は、緊張しているような強張った顔をマフラーに埋め、けれど拒むことなく、彼の手を握り返していた。
周囲の雑音が消え、残酷なほどしっくりくる二人の姿が、スローモーションのように視界に焼き付く。
凍った雪の放つ冷気が、わずかに開いた口元から入り込んで、僕の全身を芯まで冷やした。
――噂は、残念ながら、本当だった。
『森さんって、年上の彼氏がいるらしいぜ』
『マジかー。それじゃあやっぱり俺らじゃ相手にならねーな』
彼女にはいくつか真偽不明の噂が囁かれていたが、一番真実であってほしくなかったものが、決定的な事実として、ずしりと胸にのしかかった瞬間だった。
彼女には、僕たちの知らない世界がある。
大人っぽい彼女に、年上の彼氏。
悲しくも、腑に落ちてしまう感覚もあった。
僕が泥だらけのユニフォーム姿でグラウンドに入り浸る間に、彼女は少し大人の階段を上っている。
その事実は、中学生だった僕に、埋めようのない距離を突きつけた。
部活帰りの夕暮れ時。
吐く息が白く凍るような寒い日だった。
友達と別れ、商店街のアーケードを抜けた先、駅前のイルミネーションが煌めく雑踏の中で、僕は見てしまったのだ。
手を繋いで歩く、ひと組の男女を。
(…………彼女だ)
制服の上にベージュのダッフルコートを羽織り、柔らかそうな白いマフラーを巻いて歩く女の子は、森美絵だった。
その隣には、背の高い男がいた。
制服のズボンからして、市内の進学校に通う高校生だろうか。
彼女は、緊張しているような強張った顔をマフラーに埋め、けれど拒むことなく、彼の手を握り返していた。
周囲の雑音が消え、残酷なほどしっくりくる二人の姿が、スローモーションのように視界に焼き付く。
凍った雪の放つ冷気が、わずかに開いた口元から入り込んで、僕の全身を芯まで冷やした。
――噂は、残念ながら、本当だった。
『森さんって、年上の彼氏がいるらしいぜ』
『マジかー。それじゃあやっぱり俺らじゃ相手にならねーな』
彼女にはいくつか真偽不明の噂が囁かれていたが、一番真実であってほしくなかったものが、決定的な事実として、ずしりと胸にのしかかった瞬間だった。
彼女には、僕たちの知らない世界がある。
大人っぽい彼女に、年上の彼氏。
悲しくも、腑に落ちてしまう感覚もあった。
僕が泥だらけのユニフォーム姿でグラウンドに入り浸る間に、彼女は少し大人の階段を上っている。
その事実は、中学生だった僕に、埋めようのない距離を突きつけた。