ふたつの弧が、重なるとき ――元エースピッチャーの彼と、走り高跳びの彼女。熱を持った六年越しの初恋を、不器用に重ね合わせていく。
第65話
夜の冷たい空気を切って歩いているうちに、すっかり身体が冷え切ってしまった。
アパートに着くと、祥ちゃんは「風邪引くから先に入りな」とすぐにお湯をためてくれて。
お言葉に甘えて一番風呂をもらった。
彼も冷えているかもしれないから、早めに上がる。
祥ちゃんの部屋に置かせてもらっている、私専用のパジャマ。淡いイエローの柔らかなガーゼ生地に腕を通した。
ふわりと鼻をくすぐる、彼と同じ柔軟剤の匂い。
この香りに包まれるといつも、深い安らぎと、彼に抱きしめられているようなドキドキが混ざり合って、なんともこそばゆい気持ちになってしまう。
洗面所を出てお礼を伝えると、祥ちゃんは「いーえ」と言って、いつものごとく烏の行水のような猛スピードでシャワーを終えて出てきた。
「いつも通り早いね」
思わず笑ってしまう。
私はまだ、ソファベッドに座って壁にもたれかかりながらタオルドライ中だった。
濡れた髪のままの祥ちゃんが、私の後ろへと回る。
そして、壁との間に入り込むようにして座り、両足で私をすっぽりと挟み込んだ。
「貸して」
膝の横に置いていたドライヤーをスッと取って、私の髪を乾かし始めた。
「……短い。サラサラ」
温風とともに、大きな手が私の髪を梳く。
その心地よい感触にきゅんとしながら、目を細めた。
「短いの、絡まなくて楽なんだよねー」
「……中学のときは、もっと短かったよな」
耳元で聞こえた呟きに、少し驚いて振り返ろうとしたけれど、頭を固定され阻まれた。
「あ、うん! 部活やってたからね。ずっと顎くらいのボブだったかな。……よく覚えてるね」
「……そりゃあね」
頭上から、フッと小さく笑う声が降ってくる。
『そりゃあ、ずっと好きだったからね』
言葉には出されなかったけれど、そう勝手に変換してしまった私は、こっそりと頬を緩ませた。
私の髪は短くなったおかげですぐに乾き、二人の位置を交換して、今度は私が祥ちゃんの髪を乾かし始めた。
「祥ちゃんも、少し伸びたね」
指先に絡む、少し長めの前髪を乾かしながら言う。
彼は「邪魔だから切りたいんだけど、美容院行くの億劫で」と、面倒くさそうに苦笑いした。
「短髪の祥ちゃんも好きだけど、このくらいの祥ちゃんも好きだよ」
素直な感想を口にすると、広い肩がピタッと固まった。
「どうしたの?」
不思議に思って覗き込むと、視線を逸らされた。
「いや……なんか今日、ストレートじゃない?」
照れたように耳を赤くしている姿に、愛おしい気持ちでいっぱいになった。
アパートに着くと、祥ちゃんは「風邪引くから先に入りな」とすぐにお湯をためてくれて。
お言葉に甘えて一番風呂をもらった。
彼も冷えているかもしれないから、早めに上がる。
祥ちゃんの部屋に置かせてもらっている、私専用のパジャマ。淡いイエローの柔らかなガーゼ生地に腕を通した。
ふわりと鼻をくすぐる、彼と同じ柔軟剤の匂い。
この香りに包まれるといつも、深い安らぎと、彼に抱きしめられているようなドキドキが混ざり合って、なんともこそばゆい気持ちになってしまう。
洗面所を出てお礼を伝えると、祥ちゃんは「いーえ」と言って、いつものごとく烏の行水のような猛スピードでシャワーを終えて出てきた。
「いつも通り早いね」
思わず笑ってしまう。
私はまだ、ソファベッドに座って壁にもたれかかりながらタオルドライ中だった。
濡れた髪のままの祥ちゃんが、私の後ろへと回る。
そして、壁との間に入り込むようにして座り、両足で私をすっぽりと挟み込んだ。
「貸して」
膝の横に置いていたドライヤーをスッと取って、私の髪を乾かし始めた。
「……短い。サラサラ」
温風とともに、大きな手が私の髪を梳く。
その心地よい感触にきゅんとしながら、目を細めた。
「短いの、絡まなくて楽なんだよねー」
「……中学のときは、もっと短かったよな」
耳元で聞こえた呟きに、少し驚いて振り返ろうとしたけれど、頭を固定され阻まれた。
「あ、うん! 部活やってたからね。ずっと顎くらいのボブだったかな。……よく覚えてるね」
「……そりゃあね」
頭上から、フッと小さく笑う声が降ってくる。
『そりゃあ、ずっと好きだったからね』
言葉には出されなかったけれど、そう勝手に変換してしまった私は、こっそりと頬を緩ませた。
私の髪は短くなったおかげですぐに乾き、二人の位置を交換して、今度は私が祥ちゃんの髪を乾かし始めた。
「祥ちゃんも、少し伸びたね」
指先に絡む、少し長めの前髪を乾かしながら言う。
彼は「邪魔だから切りたいんだけど、美容院行くの億劫で」と、面倒くさそうに苦笑いした。
「短髪の祥ちゃんも好きだけど、このくらいの祥ちゃんも好きだよ」
素直な感想を口にすると、広い肩がピタッと固まった。
「どうしたの?」
不思議に思って覗き込むと、視線を逸らされた。
「いや……なんか今日、ストレートじゃない?」
照れたように耳を赤くしている姿に、愛おしい気持ちでいっぱいになった。