ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの両片思い。不器用なふたりが、東京で0センチメートルになるまで。~
 ◇

 ドライヤーを終え、二人でベッドに寝転がって向かい合う。

 祥ちゃんは、私の短くなった毛先を片手でずっといじっている。
 気持ちいいけれど……少しだけくすぐったい。

「……今日、何時からあの店いたの?」
 彼がふと尋ねてきた。
「五時だよ」
「えっ、五時間も!? 何話してそんなに盛り上がってたの?」
 目を丸くする祥ちゃん。

 まさか『バレンタインのチョコ事件について相談していた』とは言えない。

「んー、いずみと正人くんの過去の恋バナとかかな? 正人くんの前の彼女の話、聞いたことある? なんか切なかったなー」
「あー、少しだけ聞いたことある」
「そっか。男の子同士でも、そういう話したりするんだね」
「いや、ほとんど話さないよ。正人のをちょっと聞いただけで。俺は話せるような過去もないし」
 その言葉に、私も同意して頷いた。
「私も話せるような話ないから、二人の話をずっと聞いてるだけだったけど、楽しかったよ」

「……え、でも……」
「なに?」

 私が不思議に思って首を傾げると、祥ちゃんは「あ。まずい」という顔をして口をつぐんだ。

(あれ……?)

 私の元彼(と言えるかも微妙な相手だけれど)の話は、今まで聞かれもしなかったし、自分から話す機会もなかった。
 だから、祥ちゃんは知らないとばかり思っていた。

 でも、今の反応は……。

「……祥ちゃん、何か知ってたりする?」

 恐る恐る尋ねると、彼はバツの悪そうな顔で、ぽつりとこぼした。

「……ごめん。実は中学の時、美絵が彼氏っぽい人と歩いてるの……見たことがあって」

「えっ! 祥ちゃんが……見たの!?」

 彼と並んで歩いたことなんて、ほんの二、三度しかなかったはずだ。
 ……それをたまたま見られていたなんて。

「あ……そうだったんだ! いや、あれはね……付き合ってたのかも怪しくて……」
 私は慌てて身を乗り出した。
「何回か、ほとんど喋らない映画デートに行っただけで……本当に何もなく終わったの。だから私の中では、ちゃんと付き合ったのは祥ちゃんが初めてっていう気持ちで……。私こそごめんね、ちゃんと言ってなくて……」

 必死に弁解すると、祥ちゃんは「あ……そうなんだ」と少し安堵したような息を吐いた。
 けれど、なんだかまだ釈然としない様子で視線を落としている。
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