ふたつの弧が、重なるとき ――元エースピッチャーの彼と、走り高跳びの彼女。熱を持った六年越しの初恋を、不器用に重ね合わせていく。
 ◇

 涙がおさまってからは、色々と楽しい話で盛り上がることができた。
 二人のおかげで、さっきまでの泥沼のような思考から抜け出し、少しだけ心が軽くなっているのを感じた。


「……すみません。楽しい場で泣いたりして」

 駅の改札前。別れ際に、改めて頭を下げた。

「いえいえ! 若い二人と飲めるなんて楽しかったわー。また行こうね!」

「店長、ごちそうさまでした」

 私たちとは路線が違う店長は、ヒールを鳴らして元気に手を振りながら去って行った。


 改札前で、柳くんと二人きりになる。

「柳くん、ごめん。柳くんのせいじゃないからね」

 彼は「……ああ」と、短く相槌を打った。

 それからお互いあまり喋らずに改札へ入り、それぞれのホームへの階段前まで歩いた。

「……じゃ。元気出せよ」

 最後、少し視線を逸らしながら、ぶっきらぼうにその一言をかけてくれた。

「……ありがとう。おやすみ!」

 お礼を言って、踵を返す。

 背後から「あれ? あいつ、方向あっちだっけ」という呟きが聞こえた気がした。

 私は酔った頭のまま、自分の家とは逆の方向――祥ちゃんの家へと向かう電車に乗っていた。
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