ふたつの弧が、重なるとき ――元エースピッチャーの彼と、走り高跳びの彼女。熱を持った六年越しの初恋を、不器用に重ね合わせていく。
◇
翌朝、重たい瞼をゆっくりと開けると、横にあるはずの温もりがなかった。
祥ちゃんはベッドを背もたれにして床に座り、膝を立てて一点を見つめていた。
その背中は、なんだかひどく寂しそうに見えた。
身体を起こすと、私が目を覚ましたことに気づいた彼は振り返る。
「……おはよ」
声のトーンは低かったけれど、私を気遣うように小さく微笑んでくれた。
でも、その顔はどこか無理をしているようで。
彼を疲れさせている自分の存在を突きつけられたような気がして、申し訳なさで喉の奥が熱くなる。
「……おはよう」
弱々しい声で返すのが精一杯だった。
祥ちゃんは再び前を向き直し、ぽつりぽつりと話し始めた。
「昨日……俺が『話せる?』ってメッセージ送ったから、来てくれたんだよね。せっかく来てくれたのに、ちゃんと話せなかったな。……ごめん」
その優しい声が胸に刺さって、慌てて首を振った。
「ううん。私こそ……バイトで疲れてるのに遅い時間に突然来て、ごめんね……」
そこから、重苦しい沈黙が流れた。
いつも一緒に過ごしている部屋の中がしんと静まり返っていて、自分の嫌な心臓の音が聞こえてきそうだった。
やがて、その静寂を破るように祥ちゃんが口を開いた。
「昨日泣いたのって……本当に、バイトのミスのことだけ?」
「……えっ」
「……昼間の、志乃といたこと。何か関係ある?」
核心を突かれ、息を呑んだ。
答えられない。
図星だったけれど、どう返したらいいのかわからなかった。