ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの両片思い。不器用な二人が、東京で0センチメートルになるまで~
図書館の自習スペースは、まるで試験前の戦場のようだった。
必修科目のレポートとテスト勉強に追われている私は、ここ数日は図書館に入り浸っている。
(ちょっと休憩だ)
重たい空気が澱む閲覧室を出て、少し開けたラウンジへと向かった。
窓の外は、梅雨明けを知らせる入道雲が湧き上がっている。
ガラス越しでも伝わる強烈な陽射しが、床に落ちる影を色濃く焼き付けていた。
自販機で買った冷たい炭酸飲料の缶を頬に当てて、一息つく。
(ふー、生き返る)
張り詰めていた緊張感がほぐれ、少しホッとしたとき、ふと、窓際の席に突っ伏している大きな背中が目に入った。
周りの学生が忙しなくペンを動かす中、その席だけ時間が止まったように静かだった。
(……あれ、瀬川くんじゃ?)
見間違えるはずがない。
でも、真面目な彼が、こんな場所で居眠りなんて珍しい。
いつもなら背筋を伸ばして本を読んでいたり、課題を進めているのに。
私はなぜか胸騒ぎがして、そっと彼のもとへと歩み寄った。
近づくにつれて、彼の呼吸が少し荒いことに気づく。
机に伏せられた顔は腕に埋まっていて見えないけれど、首筋には玉のような汗が滲んでいた。
「瀬川くん……?」
小さな声で呼びかけ、彼の肩にそっと触れる。
シャツ越しに伝わってきたのは、驚くほどの熱さだった。
「っ!」
私の声に反応して、彼がゆっくりと顔を上げた。
虚ろな瞳が、焦点の合わないまま私を映す。
いつもは涼しげな目元が赤く充血し、頬は不自然なほど紅潮していた。
「……森……さん?」
カサカサに乾いた声。
「瀬川くん、すごい熱だよ! 大丈夫!?」
私が慌てて覗き込むと、彼は申し訳なさそうに眉を寄せ、力なく笑おうとした。
「あー……わり。ちょっと、寝落ちしてて……大丈夫、だから」
大丈夫なわけがない。
彼が、頭を押さえながら、グラリとよろめく。
私は咄嗟に彼の腕を掴み、身体を支えた。
ドシリと重い、男の人の体重。
彼の熱い吐息が、私の腕にかかる。
彼の香りと混じって、少し汗と、熱っぽい匂いがした。
必修科目のレポートとテスト勉強に追われている私は、ここ数日は図書館に入り浸っている。
(ちょっと休憩だ)
重たい空気が澱む閲覧室を出て、少し開けたラウンジへと向かった。
窓の外は、梅雨明けを知らせる入道雲が湧き上がっている。
ガラス越しでも伝わる強烈な陽射しが、床に落ちる影を色濃く焼き付けていた。
自販機で買った冷たい炭酸飲料の缶を頬に当てて、一息つく。
(ふー、生き返る)
張り詰めていた緊張感がほぐれ、少しホッとしたとき、ふと、窓際の席に突っ伏している大きな背中が目に入った。
周りの学生が忙しなくペンを動かす中、その席だけ時間が止まったように静かだった。
(……あれ、瀬川くんじゃ?)
見間違えるはずがない。
でも、真面目な彼が、こんな場所で居眠りなんて珍しい。
いつもなら背筋を伸ばして本を読んでいたり、課題を進めているのに。
私はなぜか胸騒ぎがして、そっと彼のもとへと歩み寄った。
近づくにつれて、彼の呼吸が少し荒いことに気づく。
机に伏せられた顔は腕に埋まっていて見えないけれど、首筋には玉のような汗が滲んでいた。
「瀬川くん……?」
小さな声で呼びかけ、彼の肩にそっと触れる。
シャツ越しに伝わってきたのは、驚くほどの熱さだった。
「っ!」
私の声に反応して、彼がゆっくりと顔を上げた。
虚ろな瞳が、焦点の合わないまま私を映す。
いつもは涼しげな目元が赤く充血し、頬は不自然なほど紅潮していた。
「……森……さん?」
カサカサに乾いた声。
「瀬川くん、すごい熱だよ! 大丈夫!?」
私が慌てて覗き込むと、彼は申し訳なさそうに眉を寄せ、力なく笑おうとした。
「あー……わり。ちょっと、寝落ちしてて……大丈夫、だから」
大丈夫なわけがない。
彼が、頭を押さえながら、グラリとよろめく。
私は咄嗟に彼の腕を掴み、身体を支えた。
ドシリと重い、男の人の体重。
彼の熱い吐息が、私の腕にかかる。
彼の香りと混じって、少し汗と、熱っぽい匂いがした。