ふたつの弧が、重なるとき ~元エースピッチャーの彼と、走り高跳びの彼女。熱を持った六年越しの初恋を、不器用に重ね合わせていく~【完結】
 ◇

 微熱の残る頭で、スマホの画面を見つめていた。

『湯冷めしないようにすぐ髪乾かしてね』

 彼女からの返信に、口元が緩む。

 実は、風呂に入っていいかどうかくらい、自分でもわかっていた。
 わからなかったとしても、ネットで調べればいいだけだ。

 ただ、彼女との会話を、もう少しだけ続けたくなってしまったのだ。

「お大事に」「ありがとう」で終わってしまうのが寂しくて。
 いつもだったら、遠慮してしまったかもしれないけど……今日くらいならいいかなと、つい、どうでもいい質問を投げてしまった。

 彼女は優しく答えてくれた。
 僕のくだらない甘えを、受け止めてくれた。

「……風呂、入るか」

 重い腰を上げ、ふらつく足取りで浴室へ向かう。

 汗で張り付いたTシャツを脱ぎ捨てながら、鏡に映った自分を見る。
 力ない顔をしている。
 目は少しだけ、熱とは違う理由で潤んでいるかもしれない。

 シャワーのノブをひねると、頭上にお湯が降り注ぐ。
 身体の汗を洗い流しても、胸の奥のくすぐったい感情は残り続けていた。
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