ふたつの弧が、重なるとき ――元エースピッチャーの彼と、走り高跳びの彼女。熱を持った六年越しの初恋を、不器用に重ね合わせていく。
 ◇

「……ん? なになに。君たち、知り合い?」

 正人の間の抜けた声が、止まっていた時間を強引に動かした。

 居酒屋の喧騒が、ダムが決壊したように再び耳に押し寄せてくる。
 現実に引き戻され、自分の心臓が早鐘を打っていることに気づいた。

「あ、えっと……。中学の、同級生で」

 喉が張り付いて、うまく声が出ない。
 震えそうになる指先を隠すように、彼女の正面に座った。

「ええっ、マジか! 地元、福島だったよな? すげえ偶然! こんなことあるんだなー!」

 正人が大げさに驚き、周りの部員たちも「運命じゃん!」とはやし立てる。

 誰よりも驚いているのは、僕自身だ。
 まだ足元がフワフワとして、水の中にいるような感覚が抜けない。

「……久しぶり」

「……うん。久しぶり、瀬川くん」

 彼女の声は、記憶よりも少しだけ大人びていて、けれど芯の部分にある温かさは変わっていなかった。

「まさか、同じ大学で、同じサークルで会うなんてね」

 そう言って、はにかんだ。

 知らぬ間に運ばれてきていたジョッキには、無数の水滴がついていた。

 地元福島から遠く離れたこの場所で、今。
 幅一メートル程度しかないテーブル越しに、向かい合っている。

 高嶺の花だった彼女と、それを遠くから見つめる僕。

 その笑顔を知ってから、六年の月日を経たというのに。
 いまだにそれを直視できない僕は、ぎこちなく自分のグラスを持ち上げた。
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