ふたつの弧が、重なるとき ~元エースピッチャーの彼と、走り高跳びの彼女。熱を持った六年越しの初恋を、不器用に重ね合わせていく~【完結】
 ◇

『姉貴には頭が上がらない』

 あの困ったような笑顔が、脳裏に焼き付いている。

 再会した当初は、中学時代のマウンドでの印象が強くて、無口で冷静な人だと思っていた。
 今では、穏やかで優しくて、私にはどこか保護者のように接してくれる彼を知った。
 でも、実はお姉さんにあれこれ言われて慌てたりしている彼もいたんだ。

 私の知らない瀬川くんが、まだまだたくさんいる。

 さっき試合中に感じた、真希さんとの距離感への嫉妬は、まだ胸の奥で燻っているけれど。

 それ以上に――。

(もっと、知りたいよ)

 彼の過去や、家族のこと、まだ知らない表情を。

 格好良くないところとか、不器用なところでもいい。
 いろんな色を、もっと近くで感じてみたい。

 入り口から吹き込む風が、汗ばんだ首筋を冷やしていく。
 隣でドリンクを飲む彼の喉仏を横目で盗み見ながら、胸の奥で小さな願いを抱いていた。
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