ふたつの弧が、重なるとき ~元エースピッチャーの彼と、走り高跳びの彼女。熱を持った六年越しの初恋を、不器用に重ね合わせていく~【完結】
 ◇

「俺もっ!?」

 いつものでかい声で騒ぐ正人、そして森さんを、いずみが何か言いながら廊下へと連れ出していく。

 ふすまが閉まる一瞬。
 見えてしまった。
 森さんの顔が、見たこともないほど真っ赤に染まっているのを。

 そして、その原因を作ったであろう正人が、驚きと興奮が入り混じったような顔でついていくのを。

 ザワザワとした宴会場の喧騒が、急に遠くなる。
 コップを持つ手が止まった。

(……なんだ?)

 正人が何かを言った。
 それに対して、森さんがあんなに顔を赤くして……。

 嫌な想像が、黒いインクのように脳内に広がる。

 正人は明るくて、話がうまくて……誰とでも仲良くなれる。
 もしかして、正人が森さんに何かアプローチをしたのか?
 それとも、森さんが正人のことを……?

 顔を真っ赤にするなんて反応、ただの友達相手にするだろうか。

「……はは。まさかな」

 乾いた笑いを漏らし、ぬるくなった烏龍茶を喉に流し込んだ。

 正直、油断していた。
 正人は「ヨッシー」なんて呼んで、気軽な友達だと思っていたけれど。
 あいつの良さに、彼女が気づいてしまった可能性だってある。

 胸の奥がざらつく。
 宴会場の黄色い照明が、急に薄暗く感じられた。

 何度もふすまの方を見ながら、座布団の上で落ち着きなく座り直した。
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