ふたつの弧が、重なるとき ~元エースピッチャーの彼と、走り高跳びの彼女。熱を持った六年越しの初恋を、不器用に重ね合わせていく~【完結】
◇
宴会後そのまま眠れるようにメイクを落としているのか、いつもより少しあどけない顔に、ふと中学時代の面影を感じた。
「祥ちゃん」
そんな彼女から急に放たれた呼び名の破壊力は、僕の思考回路を完全にショートさせるのに十分だった。
心臓が、肋骨を蹴破りそうなほど暴れている。
顔が熱いなんてもんじゃない。爆発しそうだ。
目を向けると、トロンとした瞳で僕を見て、無防備に笑っている。
(か、可愛すぎる……)
反則だ。
こんな姿、絶対に僕以外には見せないでほしい。
顔全体が緩みまくってしまい、せめて口元だけはと、手のひらで覆って隠す。
「……わかった。じゃあ……美、絵」
ぎこちない声でなんとか応えると、彼女は満足そうに「うん」と頷いた。
そして。
――コトン。
右肩に、重みが乗った。
「え……」
見ると、僕に頭を預けて、完全に目を閉じていた。
スー、スー。と、規則正しい寝息が聞こえてくる。
栗色の髪が首筋にさらりとかかって、くすぐったい。
肩越しに彼女の体温が伝わってくる。
全身が硬直した。
動けない。動きたくない。
この瞬間が、永遠に続けばいいのに。
「おーい、祥太郎。お前……リア充かよー?」
遠くの席から、先輩たちがニヤニヤしながら茶化してきたが、返す言葉が思いつかず、力なく笑って誤魔化した。
この状況……どうすればいいんだ。
可哀想だけど起こしてあげて、部屋に帰って寝るよう促すべきなんだろうけど……。
身体を動かさないように気をつけながら、彼女の寝顔に視線だけを向ける。
長いまつ毛が頬に影を落とし、唇が小さく開いていた。
なんだか、幸せそうだ。
(……まあ、いいか)
溶けそうな幸福感とともに、僕にも睡魔が襲ってきた。
この温もりに触れていたら、もう何も考えられなくなった。
彼女の頭に、自分の頭を乗せる……のは、さすがに、憚られるので。
首を下に向け、ゆっくりと目を閉じた。
宴会場のざわめきが、遠い波の音のように心地よく聞こえる。
故郷から遠く離れたこの場所で、僕たちの距離は、肩と肩が触れ合う0センチメートルになっていた。
宴会後そのまま眠れるようにメイクを落としているのか、いつもより少しあどけない顔に、ふと中学時代の面影を感じた。
「祥ちゃん」
そんな彼女から急に放たれた呼び名の破壊力は、僕の思考回路を完全にショートさせるのに十分だった。
心臓が、肋骨を蹴破りそうなほど暴れている。
顔が熱いなんてもんじゃない。爆発しそうだ。
目を向けると、トロンとした瞳で僕を見て、無防備に笑っている。
(か、可愛すぎる……)
反則だ。
こんな姿、絶対に僕以外には見せないでほしい。
顔全体が緩みまくってしまい、せめて口元だけはと、手のひらで覆って隠す。
「……わかった。じゃあ……美、絵」
ぎこちない声でなんとか応えると、彼女は満足そうに「うん」と頷いた。
そして。
――コトン。
右肩に、重みが乗った。
「え……」
見ると、僕に頭を預けて、完全に目を閉じていた。
スー、スー。と、規則正しい寝息が聞こえてくる。
栗色の髪が首筋にさらりとかかって、くすぐったい。
肩越しに彼女の体温が伝わってくる。
全身が硬直した。
動けない。動きたくない。
この瞬間が、永遠に続けばいいのに。
「おーい、祥太郎。お前……リア充かよー?」
遠くの席から、先輩たちがニヤニヤしながら茶化してきたが、返す言葉が思いつかず、力なく笑って誤魔化した。
この状況……どうすればいいんだ。
可哀想だけど起こしてあげて、部屋に帰って寝るよう促すべきなんだろうけど……。
身体を動かさないように気をつけながら、彼女の寝顔に視線だけを向ける。
長いまつ毛が頬に影を落とし、唇が小さく開いていた。
なんだか、幸せそうだ。
(……まあ、いいか)
溶けそうな幸福感とともに、僕にも睡魔が襲ってきた。
この温もりに触れていたら、もう何も考えられなくなった。
彼女の頭に、自分の頭を乗せる……のは、さすがに、憚られるので。
首を下に向け、ゆっくりと目を閉じた。
宴会場のざわめきが、遠い波の音のように心地よく聞こえる。
故郷から遠く離れたこの場所で、僕たちの距離は、肩と肩が触れ合う0センチメートルになっていた。