ふたつの弧が、重なるとき ――元エースピッチャーの彼と、走り高跳びの彼女。熱を持った六年越しの初恋を、不器用に重ね合わせていく。
 ◇

「……お待たせ」

 数分後、二つのカバンを肩にかけた彼が、少し息を切らして戻ってきた。
 私に向けられた微笑みは、これまでの「優しい同級生」のものとは違って、ちょっぴり甘さと独占欲を含んでいるように見えて、思わずドキッとした。

 彼の住むアパートは大学から徒歩圏内なので、電車に乗る必要はない。
 それなのに彼は、当然のように私の歩幅に合わせて駅まで歩き、同じ電車に乗ってくれた。

(また、送ってくれるんだ……)

 陽だまりの中にいるように、心が解けていく。

 揺れる車内。
 何から話したらいいかわからず、黙ったまま並んで座っていた。
 けれど、その沈黙はちっとも気にならなかった。
 隣に体温を感じられるだけで、幸せのキャパシティがいっぱいになっていたのだ。


 私の最寄り駅で降り、改札を抜ける。

 夕暮れの風が吹き込んだ時、彼が私の右手をそっと包み込んだ。

 少し驚いたけれど、私もずっとそうしたかったから。
 ただ嬉しくて、あたたかくて大きいその手を、ぎゅっと握り返した。
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