ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの両片思い。不器用なふたりが、東京で0センチメートルになるまで。~
「……お待たせ」

 数分後、二つのカバンを肩にかけた彼が、少し息を切らして戻ってきた。
 私を見つけて微笑むその顔は、これまでの「優しい同級生」のものとは違う、ちょっとした甘さと独占欲を含んでいるように見えて、また胸がドキリと鳴った。

 彼の住むアパートは大学から徒歩圏内なので、電車に乗る必要はない。
 それなのに彼は、当然のように私の歩幅に合わせて駅まで歩き、同じ電車に乗ってくれた。

(また、送ってくれるんだ……)

 心がポカポカと陽だまりのように温かい。

 揺れる車内。
 横に並んで座る間、お互い何から話したらいいかわからず、二人ともずっと黙ったままだった。
 けれど、沈黙がちっとも気にならない。
 ただ隣に体温を感じられるだけで、幸せのキャパシティがいっぱいになっていた。

 私の最寄り駅で降り、改札を抜ける。

 秋の夕暮れの風が吹き込んだ時、彼がそっと包み込むように、私の右手を握った。

 少し驚いたけれど、私もずっとそうしたかったから。
 ただ嬉しくて、温かいその大きな手を、ぎゅっと握り返した。
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