ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの両片思い。不器用なふたりが、東京で0センチメートルになるまで。~
 電車が彼女の最寄り駅に着くまでの間。
 僕は頭の中で言葉を探し続けていたが、結局気の利いたことは何も言えなかった。

 中学時代からずっと、手の届かない場所で輝いていた彼女。
 今、僕の左に、僕を好きだと言った彼女がいることが、どうしても現実味を持たない。

 ……中学の時からずっと好きだったこと。
 そんなことも、今伝えるべきなのか?

 いや、今日想いが通じ合ったばかりなのに、六年越しの片思いを打ち明けるなんて、重すぎて引かれるかもしれない。
 とりあえず今はやめておこう……。

 そんな葛藤をしながら、彼女の最寄駅の改札を出た。

 夕焼けの沈みかけた群青色の空の下、オレンジ色の街灯に照らされる彼女の横顔があまりにも非現実的で美しい。

 これは僕の都合のいい夢じゃないかと確かめたくて。いや、ただ単に彼女に触れたくて、僕は歩きながらそっと彼女の手を握った。

(……握ってもよかったかな)

 不安になったが、彼女は少し驚きながらも、すぐに小さな指を絡ませて、しっかりと握り返してくれた。
 その確かな力強さが、これが夢ではない現実だと教えてくれる。

 僕は幸せすぎて、今日死んでしまうんじゃないかと本気で震えた。
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