ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの両片思い。不器用なふたりが、東京で0センチメートルになるまで。~

第42話

 昼食を終え、二人でサークルの作業部屋へと向かう道中も、止まらない正人からの追及祭り。

「で? どっちから言ったの!?」
「どこで!?」
「ヨッシー、なんて言ってた!?」

 矢継ぎ早に飛んでくる質問攻めを、僕は「うるさい」「前見ろ」とすべてスルーして歩き続けた。


 やがて、講義棟の端にある作業部屋のドアの前に到着した。

(……美絵、いるかな)

 ドアノブに手をかけた瞬間、付き合っていなかった昨日までとはまた少し違う、こそばゆい緊張感が指先に走った。
 深呼吸をして、ゆっくりとドアを押し開ける。

 部屋の中には、すでにわりと多くの部員たちが集まっており、色を塗ったり、段ボールを切ったりと忙しなく動いていた。

 そして窓際の床に――いずみと、美絵の姿があった。

「あ、来た来た! おーい! お疲れー!」
 僕たちの姿に気づいたいずみが、いつも以上に大きく、ちぎれんばかりに手を振っている。

 その隣で、美絵は少しだけ頬を染めながら、小さく控えめにこちらへ手を振り返してくれた。
 その奥ゆかしい仕草が、昨日からの変化を如実に物語っていて、今度は胸がこそばゆくなる。

 僕たちが二人のもとへ近づくと、正人は目をキラキラと輝かせ、僕と美絵の顔を高速で交互に見た。
「……聞いたの!?」
 その様子を見たいずみが、確認するように正人へ尋ねる。
「いずみんもか!?」
 正人が答えた瞬間、二人は「いえーーい!!」と大声を上げながら、両手で派手なハイタッチを交わした。
 まるで自分たちが付き合ったかのような、異常な盛り上がりっぷりだ。

 そんな二人を見て、美絵は恥ずかしそうに眉を下げながらも、「ありがと」と小さく笑った。

「……そんな盛り上がってくれんだな」
 少し呆れたように笑いながら、僕は空いていた美絵の隣の床に腰を下ろした。

 至近距離で触れる彼女の空気。
 横顔をチラリと盗み見ると、美絵は嬉しそうに照れながら俯いていた。
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