ふたつの弧が、重なるとき ――元エースピッチャーの彼と、走り高跳びの彼女。熱を持った六年越しの初恋を、不器用に重ね合わせていく。
 ◇

「明日から楽しむぞー! かんぱーい!」

 乾杯の音頭とともに、無数のジョッキやグラスが派手な音を立ててぶつかり合う。

 祥ちゃんの席の周りには、さっそく先輩や同期の男子たちが群がってきていた。

「おいっ、祥太郎! こんな可愛い彼女作りやがって、許されると思ってんのか!」
「中学の同級生が再会して付き合うだと? 漫画か! 調子乗りすぎだろ!」
「いいからとりあえず飲め! 今日はお前のターンな!」

 次々と押し付けられそうになるグラスの山。
 祥ちゃんは「いやいやいや」と半分本気で苦笑いしながら、目の前に突き出されるジョッキを両手で押し返した。

「明日朝一からクラスの出し物のシフト入ってるんすよ!」

「そんなん知らん!」

 ため息をつきながらも、彼の横顔はどこか楽しそうだ。
 いつも私には、壊れ物を扱うように――たまに少し過保護すぎるくらい――優しくて、穏やかだ。
 でも同性から絡まれて、やや面倒くさそうに、適当にあしらっている時なんかは、年相応の男の子に見える。
 私に向けられる顔とも、少年野球で指導している時の顔とも違う。
 その無防備で雑な一面に、キュンとしてしまう。

(……私も今度、二人きりの時、ちょっとウザ絡みしてみようかな)

 彼がどんな風に困って、どんな顔で私をあしらうのか、見てみたい。
 そんなイタズラ心が、炭酸の泡のようにプクプクと湧き上がってきた。


 賑やかな笑い声の中で、私は誰にも気づかれないように、もう一度だけ真希さんのほうをチラッと盗み見た。

 ジョッキを片手に同期と談笑しているけれど、やはりその笑顔にいつもの太陽のような明るさはなく、曇っているように見えた。
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