ふたつの弧が、重なるとき ――元エースピッチャーの彼と、走り高跳びの彼女。熱を持った六年越しの初恋を、不器用に重ね合わせていく。
第5話
ゴールデンウィークが明けたキャンパスは、五月に入ったばかりだというのに、既に初夏の陽気に包まれている。
朝のニュースキャスターが「今日は半袖でも過ごせるでしょう」と言っていた通り、すれ違う学生たちの装いも軽やかだ。
私は、迷った末に選んだ水色の薄手のブラウスの袖を、少しだけ捲り上げた。
三限の講義が終わり、次の五限までぽっかりと空いてしまった時間。
どこかで課題を進めようと考え、ひとまずカフェテリアへと足を向けていた。
自動ドアをくぐると、天井の高いガラス張りの空間は、昼時のピークを過ぎてもなお、学生たちの熱気で溢れかえっていた。
日替わりランチはカレーだったらしい。
スパイシーな香りが、まだ空気の端々に残っている。
あちこちで飛び交う笑い声、プラスチックのトレイや食器がぶつかる乾いた音。
(やっぱり図書館のほうが、人少ないかな……)
その喧騒にやや心許なくなりながら、空いている席を探して視線を彷徨わせていた時。
窓際の日当たりの良い席で一人、本を開いている背中を見つけた。
黒髪と広い肩幅に、ごくシンプルな服装。
「あ……」
大勢の学生がいる中で、スッと目に飛び込んできた。
胸の中にあった「一人の心細さ」が、急速に溶けていくのを感じる。
気づけば私は、重い荷物も構わずに駆け寄っていた。
朝のニュースキャスターが「今日は半袖でも過ごせるでしょう」と言っていた通り、すれ違う学生たちの装いも軽やかだ。
私は、迷った末に選んだ水色の薄手のブラウスの袖を、少しだけ捲り上げた。
三限の講義が終わり、次の五限までぽっかりと空いてしまった時間。
どこかで課題を進めようと考え、ひとまずカフェテリアへと足を向けていた。
自動ドアをくぐると、天井の高いガラス張りの空間は、昼時のピークを過ぎてもなお、学生たちの熱気で溢れかえっていた。
日替わりランチはカレーだったらしい。
スパイシーな香りが、まだ空気の端々に残っている。
あちこちで飛び交う笑い声、プラスチックのトレイや食器がぶつかる乾いた音。
(やっぱり図書館のほうが、人少ないかな……)
その喧騒にやや心許なくなりながら、空いている席を探して視線を彷徨わせていた時。
窓際の日当たりの良い席で一人、本を開いている背中を見つけた。
黒髪と広い肩幅に、ごくシンプルな服装。
「あ……」
大勢の学生がいる中で、スッと目に飛び込んできた。
胸の中にあった「一人の心細さ」が、急速に溶けていくのを感じる。
気づけば私は、重い荷物も構わずに駆け寄っていた。