アースシールド♾️
二次試験中止
ーーピロリン、ピロリン、ピロリン。
巨大生命体を倒した後、腕に巻いた端末から音が鳴った。
みんなにも同時に連絡が来ているようで、端末に視線を向ける。
【特異型発生のため試験中止。速やかに入場した門まで移動を命ずる。怪我人は救護隊が向かうため、端末から連絡せよ】
どういうことだ?
「私たちはここで特異型は倒したけど、ほかの場所でも発生しているのかもしれないね」
ココちゃんの発言にみんなが顔を見合わせた。
「とにかく、全員で門に向かいましょう。攻撃してくるヤツがいれば連携して倒すということで」
私の言葉に全員が首を縦に振った。
°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。
全員で無事に門までついて一息つく。
足を怪我した月をトシと永久さんが支えてくれて、門まで来たところで救護の人に引き渡した。
月は「痛くねえ!」と言い張っていたが、コブのように足首が腫れ上がっていたので救護の人は有無を言わさず、タンカーで運んで行った。
あれは、折れてるだろうな。
「本日の試験は中止です。二次の結果は本日中に連絡します。三次試験については現状未定です。本日の試験は……」
スーツの運営委員らしき人が大きな声で繰り返していた。
「一応、連絡先交換しとく?」
会場出口までみんなでゾロゾロ歩いていると、前にいたトシが振り返ってみんなの顔を見た。
「ああ」と永久さん。
「そうね」とココちゃん。
「しょうがないわね!」とサキちゃん。
なんだか、それぞれの個性が出ていて、微笑ましい。
それぞれ連絡先を交換して、グループチャットを作る。
「月もあとで招待しとく」
私が言うと「よろしく〜」と言いながらトシがまた歩き出した。
「よーし、連絡先も交換したし、今日は帰るか〜。ふんふふーん♪」
トシが両手を頭の後ろに回して、鼻歌を歌い始める。
特異型と対面して余裕でいられるのは、ここにいる5人だけではないだろうか。
みんないい意味で心臓に毛が生えているな。
「そうね、今日は運営委員からの連絡を待つしかできなそうだし」
ココちゃんが冷静に反応する。
「私は一応、月の様子を見てから帰るわ! ペアだったしね」
そう言って、救護室に駆け足で向かったサキさん。
意外と義理堅いのだな。
サキさんをみんなが視線で見送る。
「糸ちゃん」
すると、ココちゃんが私の近くまで来て、耳元でささやいた。
「ん?」
「あの…嫌じゃなければ、今朝の約束…その…来週にでもうちに来ない?」
「いいのか?」
微笑んで私の顔を見たココちゃん。
「もちろん、お父さんにも話しておく。また連絡するね」
「ああ…ありがとう」
私の家庭の事情を知っているから、こそっと最後に声をかけてくれたココちゃんの気遣いに心の中で改めて感謝した。
「おーい! 何やってんだ、ココ! 糸! 帰るんじゃなかったか?」
少し先で両手を広げてフリフリしているトシが私とココちゃんを呼んだ。
「いや、私はサキさんを追いかけて月のところにいく。トシ、ココちゃん、永久さん。また」
手を振って別れた。
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救護室に向かう道中で、みんなが同期になるといいなと試験の余韻に浸る。
特異型が出てきたときはどうなるかと思ったが。
永久さんもトシもココちゃんも強かった。
私ももっと力をつけなければ、隊長には程遠いな。
そう思いながら歩いていると、後ろから足音が聞こえてきて、気になってパッと振り向く。
「俺も行く」
「永久さん!?」
永久さんが追いかけてきて、私の頭にポンっと手を置いた。
どうしたんだろうか。
なんで、永久さんも月のところへ?
何か伝えることでもあるのだろうか。
「月のことは私に任せてもらって大丈夫です。伝言があるなら伝えておきます。永久さんは疲れを取るために帰っ…」
「疲れてない」
永久さんは強めに言って、私の頭から手を離した。
あの特異型から囮として逃げ続けて、疲れてないわけないと思うけど。
「行くぞ」
私は腕を掴まれて、引っ張られるように救護室に向かった。
°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。
「折れてなかったみたいで安心したわ」
サキさんが湿布を貼られた月の足をバシバシ叩く。
「いてーよ! やめろ!」
「ヒビでよかったな、月」
「永久まできてくれるなんてな、ありがとな。って! だからいてーってば! サキ!」
叩き続けるサキさんを制しようと月が暴れている。
「じゃあ、月が元気そうなことも確認したし、私は帰るわね。また、どこかで会えることを祈っているわ! トワ様、連絡しますね♡」
サキさんは、捨て台詞を放って、救護室の扉から出ていった。
嵐のような人だな。
「月、家の車を呼ぶから一緒に帰ろう」
「おう、いつも悪いな。永久ももう大丈夫だぞ、俺は糸と帰るから」
「……」
突然無言になった永久さん。
どうして黙っているのだろう。
あ、もしや、車に乗って行きたいのか。
「永久さんも乗って行きますか?」
「…いや」
「糸ん家の車、ちょーでかいから気を遣わなくていいぞ」
「はい、10人は乗れるので大丈夫ですよ」
「…俺はいい、歩いて帰る。じゃあな」
ーーバシっ!
永久さんが月の足を強めに叩いて、救護室の扉の前に立った。
「いってー! 何すんだよ! 永久まで!」
「なんでふたりでいることが当たり前のようなんだ…」
何かをボソッと言った永久さん。
月への嫌味なツッコミか?
私みたいだな。
それにしても、ふたりが仲良くなってよかった。
「月、家の車を呼びながら、永久さんを送ってくるから」
「おーう!」
「永久さん、行きましょう」
「ああ」
横並びになり、ふたりで救護室を後にした。