アースシールド♾️
三次試験
二次試験の結果は、試験日の次の日に届いた。
突然発生した特異型を倒したと言う理由で、私は三次試験に進むことになった。
昨日の夜から隕石の落下が急増し、二次試験のやり直しは準備も含めて困難なため、今年度は特異型を倒したものが三次試験に進むということだった。
一緒に戦ったトシ、ココちゃん、サキさん、月、そして、永久さんは三次試験に進んだということになる。
ほかにも特異型が発生していれば、その特異型を倒した受験者も三次に進んだのだろう。
日程が指定され、二次試験から3日後の午前中に三次試験を受けに行くことになった。
しかも今年の三次試験は今年は個人戦ではなく、個人面接とのことだった。
ーーピンコン。
携帯が鳴り、【ココちゃん】の表示を確認して開く。
《試験日、決まったね。その日の午後、うちに来ない?》
《ありがとう、ぜひ。当日、試験終わったらどこかで待ち合わせよう》
《待ち合わせ了解。通過順位順なら糸ちゃんのあと私が面接だから控え室でもいいかも。また当日話そう》
《ラジャ。紫村さんにもよろしく伝えて》
三次試験が面接なのは過去の試験を遡っても初めてだ。
個人戦には自信があったが、面接となると今まで準備してきた力を全て発揮できるかわからない。
ただ、私は全力を出すのみだ。
必ず合格してみせる。
°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。
3日後、午前中。
静かな応接室。
磨き上げられた長机の向こうに、面接官が3人並んで座っている。
(人物データ照合:未登録)
父や母が仲間と写っている写真も全て記憶しているが、面接官の中に父と母の仲間はいないようだ。
私は背筋を伸ばし、椅子に浅く腰かけた。
°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。
「では、最後の質問です」
中央の面接官が書類から目を上げた。
「天城糸さん。我が組織を志望した理由を聞かせてください」
一拍だけ息を整えて、視線はまっすぐ相手に向ける。
声は自然と澄んでいた。
「はい。志望した理由は三つあります」
面接官のペンが動く。
「一つ目は、アースシールド♾️の理念が“個の完成”ではなく、“組織だけでなく、地球全体に還元できる力の育成”を掲げている点です。能力や強さだけを競うだけでなく、それをどう使うかまで教える環境は、私が目指す生き方に合致しています」
「生き方、ですか」
「はい」
小さくうなずいた。
父と母が私に願っていた「思いやりのある人」というのは、他者があって成り立つことだ。
地球全体に私の力を還元できる機会があるのであれば、こんなに嬉しいことはない。
「二つ目は、研究・実践の両面において自由度が高いことです。私は一つの正解にたどり着くよりも、複数の選択肢を比較し、自分で判断する過程を大切にしてきました。自由度が高い組織だからこそ、その判断力を鍛えられると考えました」
「なるほど」
面接官のひとりが感心したように声を漏らす。
私のことを天城恭と雅の娘というフィルター越しで見ているのだろう。
さぞ、ハードルが上がっているのだろうが、そんなことはどうでもいい。
「では三つ目は?」
ほんの一瞬だけ視線を落とした。
どうせ、私のことを両親を亡くした可哀想な英雄の娘と思っているのだ。
私が可哀想ではないことをここで証明しよう。
すぐに顔を上げて、面接官の顔を見る。
「――私には、両親がいません」
空気がわずかに揺れ、面接官の手が止まる。
「知っているさ」という顔なのか、それとも「その話をするのか」という顔なのか…どちらにせよ、私が話すことは事実のみ。
「第一次宇宙大戦で亡くなりました。突然で、準備の時間もありませんでした」
声は乱さず、言葉の一つひとつを慎重に選ぶ。
「私は、父と母に守られている立場から、選び、決断し、責任を持つ立場へ移行せざるを得ませんでした。生活のこと、進路のこと、将来のこと――すべてを自分で考える必要がありました」
「……大変でしたね」
「いいえ。そのおかげで気づいたことがあります」
まっすぐに面接官を見据える。
知識や能力は、自分を飾るためではなく、生き抜くためにあるのだ。
「両親から多くのものを受け取りました。その受け取ったものを、地球に返せる人間になります。それが、私がアースシールド♾️を志望した最大の理由です」
沈黙が続く。
やがて、中央の面接官が小さく息を吐いた。
「……非常に力強い答えですね」
「ありがとうございます」
褒められているわけではないだろうな。
「最後に一つだけ。あなたは、ご自身を“完璧な人間”だと思いますか?」
首を振った。
こんな質問、みんなにしているのだろうか。
…おそらく、私にだけだろう。
私は完璧ですと言わせたいのだろうが、そんなことはないので否定するほかない。
「いいえ。未熟です。迷いますし、怖くもなります」
そして、静かに続けた。
「完璧になるためではなく、不完全でも前に進める人間になりたいと思います」
面接官たちは、互いに視線を交わした。
「……本日はありがとうございました」
「こちらこそ、貴重なお時間をありがとうございました」
私は立ち上がり、深く一礼した。
突然発生した特異型を倒したと言う理由で、私は三次試験に進むことになった。
昨日の夜から隕石の落下が急増し、二次試験のやり直しは準備も含めて困難なため、今年度は特異型を倒したものが三次試験に進むということだった。
一緒に戦ったトシ、ココちゃん、サキさん、月、そして、永久さんは三次試験に進んだということになる。
ほかにも特異型が発生していれば、その特異型を倒した受験者も三次に進んだのだろう。
日程が指定され、二次試験から3日後の午前中に三次試験を受けに行くことになった。
しかも今年の三次試験は今年は個人戦ではなく、個人面接とのことだった。
ーーピンコン。
携帯が鳴り、【ココちゃん】の表示を確認して開く。
《試験日、決まったね。その日の午後、うちに来ない?》
《ありがとう、ぜひ。当日、試験終わったらどこかで待ち合わせよう》
《待ち合わせ了解。通過順位順なら糸ちゃんのあと私が面接だから控え室でもいいかも。また当日話そう》
《ラジャ。紫村さんにもよろしく伝えて》
三次試験が面接なのは過去の試験を遡っても初めてだ。
個人戦には自信があったが、面接となると今まで準備してきた力を全て発揮できるかわからない。
ただ、私は全力を出すのみだ。
必ず合格してみせる。
°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。
3日後、午前中。
静かな応接室。
磨き上げられた長机の向こうに、面接官が3人並んで座っている。
(人物データ照合:未登録)
父や母が仲間と写っている写真も全て記憶しているが、面接官の中に父と母の仲間はいないようだ。
私は背筋を伸ばし、椅子に浅く腰かけた。
°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。
「では、最後の質問です」
中央の面接官が書類から目を上げた。
「天城糸さん。我が組織を志望した理由を聞かせてください」
一拍だけ息を整えて、視線はまっすぐ相手に向ける。
声は自然と澄んでいた。
「はい。志望した理由は三つあります」
面接官のペンが動く。
「一つ目は、アースシールド♾️の理念が“個の完成”ではなく、“組織だけでなく、地球全体に還元できる力の育成”を掲げている点です。能力や強さだけを競うだけでなく、それをどう使うかまで教える環境は、私が目指す生き方に合致しています」
「生き方、ですか」
「はい」
小さくうなずいた。
父と母が私に願っていた「思いやりのある人」というのは、他者があって成り立つことだ。
地球全体に私の力を還元できる機会があるのであれば、こんなに嬉しいことはない。
「二つ目は、研究・実践の両面において自由度が高いことです。私は一つの正解にたどり着くよりも、複数の選択肢を比較し、自分で判断する過程を大切にしてきました。自由度が高い組織だからこそ、その判断力を鍛えられると考えました」
「なるほど」
面接官のひとりが感心したように声を漏らす。
私のことを天城恭と雅の娘というフィルター越しで見ているのだろう。
さぞ、ハードルが上がっているのだろうが、そんなことはどうでもいい。
「では三つ目は?」
ほんの一瞬だけ視線を落とした。
どうせ、私のことを両親を亡くした可哀想な英雄の娘と思っているのだ。
私が可哀想ではないことをここで証明しよう。
すぐに顔を上げて、面接官の顔を見る。
「――私には、両親がいません」
空気がわずかに揺れ、面接官の手が止まる。
「知っているさ」という顔なのか、それとも「その話をするのか」という顔なのか…どちらにせよ、私が話すことは事実のみ。
「第一次宇宙大戦で亡くなりました。突然で、準備の時間もありませんでした」
声は乱さず、言葉の一つひとつを慎重に選ぶ。
「私は、父と母に守られている立場から、選び、決断し、責任を持つ立場へ移行せざるを得ませんでした。生活のこと、進路のこと、将来のこと――すべてを自分で考える必要がありました」
「……大変でしたね」
「いいえ。そのおかげで気づいたことがあります」
まっすぐに面接官を見据える。
知識や能力は、自分を飾るためではなく、生き抜くためにあるのだ。
「両親から多くのものを受け取りました。その受け取ったものを、地球に返せる人間になります。それが、私がアースシールド♾️を志望した最大の理由です」
沈黙が続く。
やがて、中央の面接官が小さく息を吐いた。
「……非常に力強い答えですね」
「ありがとうございます」
褒められているわけではないだろうな。
「最後に一つだけ。あなたは、ご自身を“完璧な人間”だと思いますか?」
首を振った。
こんな質問、みんなにしているのだろうか。
…おそらく、私にだけだろう。
私は完璧ですと言わせたいのだろうが、そんなことはないので否定するほかない。
「いいえ。未熟です。迷いますし、怖くもなります」
そして、静かに続けた。
「完璧になるためではなく、不完全でも前に進める人間になりたいと思います」
面接官たちは、互いに視線を交わした。
「……本日はありがとうございました」
「こちらこそ、貴重なお時間をありがとうございました」
私は立ち上がり、深く一礼した。