アースシールド♾️

撤退

 震えが止まらない。
 神先生が私の背中をさすり、鶴先生が月の応急処置をする。

 私と永久さんが月と離れて戦っていたとき、ココちゃんは湖から大きな音の方へと向かったそうだ。
 するとそこには、岩の下敷きになった意識不明の月がいて、すぐに先生たちを呼び戻し、救助隊を手配してくれたのだという。
 静かに熊を呼び出したココちゃんは、敵に見つからないように熊の怪力で岩を退け、月を安全な場所へ避難させたと涙ながらに話してくれた。

ーーバタバタバタバタバタバタ。

 エンジン音が降ってくるーーアースシールド♾️救急隊だ。
 夜空をライトで照らす空飛ぶ車が私たちの近くに着陸する。
 ドアが開き、担架と医療班が飛び出した。

「負傷者は!?」

「こっちです」

 鶴先生が冷静に医療班を導く。
 月は意識がない。
 呼吸は浅く、制服は赤く染まっている。

「すぐ処置を」

 月を担架に乗せ、車内へ運び込む。
 私はただ祈ることしかできないのだ。
 数分が永遠みたいに長い。

°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。

 先生たち、ココちゃん、永久さんが月がのった担架の周りを囲む。
 私は少し離れた場所でみんなの姿を見つめる。
 どうしても月のことを見ていられなかった。

「……心拍、安定してきた」

 医療班のその一言で膝から力が抜けて、その場にしゃがみ込む。
 月は一命は取り留めたーー。

「まだ予断を許さない。集中治療室へ搬送する」

 空飛ぶ車が再び浮上し、夜空へ向かって加速していく。
 光が上空を流れていった。
 拳を握る。
 月は私を庇ってこうなったのだ。
 どうしてあんなことーー。

「……月はまだ生きている」

「糸ちゃん……月くんは大丈夫だよ。約束を守る人だよ」

 永久さんとココちゃんが隣に立つ。
 そうだ。
 月は私との約束を破るわけがない。
 生きているーーその事実だけが、今は私の希望だ。

°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。

 次の日の朝。
 神先生、鶴先生、ココちゃん、永久さんの5人で村に到着する。
 最近まで人が暮らしていたはずの家々。
 戸が開け放たれ、鍋はひっくり返り、洗濯物だけが揺れていた。
 もぬけの空か――。

「……撤収ね」

 鶴先生の落ち着いた声が響いた。

 少し歩くと、村のはずれに「十二」の文字が赤黒い文字で書かれているのを見つける。

「何これ……」

 ココちゃんが一歩、二歩と後退りする。

「襲ってきた敵のひとりに「子」と胸元に印字されたヤツがいた。そいつとも関係がありそうだ。……血だな」

 永久さんがしゃがんで文字に触れる。

「その赤黒い砂を少し持って帰って、鑑識に回しましょう」

 鶴先生が試験管のようなものを永久さんに手渡した。
 意識が朦朧としてくる。
 昨日の戦いの疲れかーー。
 昨晩は、月のことが心配で一睡もできなかったしな。
 帰ったらすぐに月のところへ行って、少しでも長く一緒にいてあげなければ。

「任務は中止。帰還だ」

 神先生の言葉と同時に、村を後にした。
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