アースシールド♾️〜地球を守る天才少女は「好き」をまだ知らない〜

お祖父様


 家に着くと、お手伝いさんが出迎えてくれてすぐにお風呂に入り、その後、夕飯を食べた。
 夕食後はリビングで、試験結果を待つ。

「ばあや、過去の二次試験をおさらいしておこう」

「かしこまりました、お嬢様。資料を映し出しますね」

 ばあやがプロジェクターの光を壁に照らした。
 去年の試験内容が映し出され、ばあやが淡々と話し始める。

「昨年は、試験場に放たれた6匹のネズミを捕まえたペアが三次試験へと進むというものでした」

(対象:ネズミ6匹、勝利条件:ネズミの捕獲)

「制限時間は6時間だったな。体力的にも精神的にも削られるな」

(制限時間:360分、長期集中型試験)

「ネズミを捕まえたペアが勝利と聞くと、先にネズミを見つけて捕まえれば勝ちーーと思う受験者が多かったのでしょう。必死になってネズミを追いかけたペアが多数だったと聞いています」

「…戦略的な受験者が少なかったのか。制限時間があるのだから、ほかのペアにネズミを捕まえさせて、時間内に奪うことも考えられたのに」

(勝利条件:保持ではなく最終所有、奪取可能性:高)

「さすが、お嬢様! 6時間もあるのですから、早く捕まえたペアはネズミを守り抜かなくてはならないと、頭に置いておかねばならないですね」

「はたまた、ネズミ6匹をひと組が捕まえてしまってもいい。そうすれば、三次試験に進めるのはそのペアだけ。つまり2名が三次に進むことになる」

「昨年、受験者だった円様は、『6匹捕まえちゃおう!』とペアの方におっしゃって、5匹捕まえたとのことでした」

「円らしい。受験者泣かせだな」

 同期が少ないとボヤいていたけど、責任は円にある。
 二次試験で大多数の受験者を落としたのは円本人なのだ。
 同意したペアだった人も相当おかしいが。

ーーピンコン。

 腕につけている端末がなって表示を見た。

【試験結果のお知らせ】

 なんの躊躇いもなく、表示をタップする。
 天城糸様と始まった文章の中央に「合格」の二文字を見つけた。

「ばあや、お祖父様のところへ行ってくる」

「承知いたしました」

 試験のおさらいを一旦中断し、リビングを出て、廊下を歩く。
 向かったのは祖父の部屋だ。

ーーコンコンコン。

 ドアを3回ノックすると「入りなさい」と部屋の中から声が聞こえた。
 深呼吸をして「失礼します」とドアの外で言ってから入室する。

「ああ、糸か。どうした」

 お祖父様は、アースシールド♾️の創設に関わった重要な人物だ。
 そのことが一目見てわかる、大きな体で威厳ある風貌をしている。
 歳をとってからは白くて長い髭がチャームポイントだ。
 去年、組織の第一線から退いたお祖父様。
 ただ、アースシールド♾️を敵視する勢力「十二凶」という組織の活動が盛んになっていることから、毎日その組織の対応に追われていた。

「午前中は外出していたと聞きました。十二凶絡みですか?」

 十二凶は、"地球を乗っ取り、地球人を管理することで、宇宙人から地球を守る"という考えを持っている組織。
 アースシールド♾️のような生半可なものでは地球は救えないと意志を示している。
それ以外は全くもって情報がなく、お祖父様も手を焼いていた。

「ああ、ちょっとな。十二凶の人間は、十二支の動物をコードネームとして使っているということがわかった。それ以外は引き続きわからん。少なくとも12名いるんだろうな」

「そうですか…」

 地球を乗っ取ろうなんて、おかしなやつらだ。
 地球人を管理する必要など、どこにある。
 1分ほど沈黙が流れた。

「糸?」

 我に返り、お祖父様の声の方を向く。

「失礼いたしました。今日は、アースシールド♾️の試験だったのでご報告です。一次試験、無事に合格しました。明日は二次試験に行ってきます」

「ちょうど私のところにも、試験の結果に関する報告が届いた。…一次試験は一位通過だな。糸は真面目だな。二次は苦労するかもしれないぞ」

 意地悪な笑みを浮かべながらお祖父様が窓の外を見ている。
 二次試験に苦労する…?

「…どうしてですか」

 思わず質問してしまった。
 すると、お祖父様はこちらを向き直して、引き続き笑みを浮かべていた。

「二次試験はツーマンセルだろう」

「はい、過去の試験内容は全て頭に入っています」

「これは頭に入っていなかったか…一次試験の一位通過は、最下位で通過したものとペアになるんだ。そうじゃないとバランスが取れないからな」

 なんだ、そういうことか。最下位の人とうまくやれるか、もちろん不安がないわけではないが。

「ハンデがあってもなくても、必ず合格します」

「お前はまっすぐに育ったな。恭は、ツーマンセルで弱いやつと組みたくないから、わざと一次試験の点数を抑えていたというのに…あいつはそういう頭が働くんだ」

 はっはっは!と大声で笑うお祖父様。
 お祖父様との会話には、いつだってお父様がいた。
 まるで私のことは見えていないかのように。

「……お父様とお母様に喜んでもらうためにも、今年、必ず隊員になります」

 お祖父様の期待する返事は心得ている。
 深く長めのお辞儀をして、部屋のドアに手をかけた。

「糸は雅に似たんだろうな」

 お祖父様の独り言がかすかに聞こえた。

ーーバタン。
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