アースシールド♾️〜地球を守る天才少女は「好き」をまだ知らない〜
二次試験開始
試験官の誘導で、ぞろぞろと二次試験を実施する第二演習場へ移動した。
巨大な第二演習場は、野生動物たちも生息する一般人が入ると危険な森だ。
演習場の前で整列する受験者たち。
月とココちゃんとは「ペアを見つけるから」と演習場の近くまで来たところで別れた。
後ろに気配を感じて振り向く。
「永久さん!」
後ろを取られたのは初めてだった。
「まさか、ペアになるとはな」
「永久さん、1000番…」
ギリギリだな。
「1000番ってなんのことだ?」
「あ…」と漏らして口を手で塞ぐ。
そうか、通過順位はみんな知らないのか。
ココちゃんと私は特別だから。
「いえ、なんでもない…です。よろしくお願いします」
ーーゴオオオオッ。
演習場の扉が開き、全員が音の鳴る方へ視線を向けた。
扉の前には、細い目の白衣を着た試験官が、口元にうすい笑みを浮かべている。
室内で案内してくれた試験官とは違う人だ。
あの試験官、気味が悪いな。
「これより、二次試験の内容を説明する。集合しなさい」
永久さんとともに、教官の目の前に移動する。
「二次試験は、この演習場の中で行われる。演習場内は、鳥やうさぎなど森の小さな生き物はもちろん、多少凶暴な動物も生息している。むやみやたらに傷つけることは許されないが、君たちに被害を加えるようであれば撃退して構わない」
周りの人達がごくんと息を呑んだ。
クマやイノシシの撃退なら問題ない。
7歳の頃、お祖父様に「修行だ!」と山に置いて行かれて、一週間過ごしたこともある。
当時は、本気で殺す気かと思ったが。
隣の永久さんも、動じていないようだ。
「制限時間は4時間。時間内に演習場に放たれた宇宙生命体の潜む隕石を破壊してもらう。隕石の種類は3種類。小型、中型、大型だ。ポイントをより多く集めたペアが三次試験に進む」
「小型、中型、大型で獲得ポイントが違うってことか…」
「大型って結構やばくない?」
周りがザワザワし始める。
「大型を破壊すれば高いポイントがもらえるが、破壊の難易度は自ずと高くなる。大型の宇宙生命体は君たち候補生が4名以上で倒すことができるレベルだ」
「「「えええええ……」」」
受験者たちは驚きを隠せない様子でざわざわと顔を見合わせている。
普通の候補生で4名以上じゃないと倒せないレベル。
そういうことなら、私ひとりでも倒せるレベルということか。
「よ、4人…ペアで行動するのに、他のペアと協力するしかないのか」
「ちょっと怖いかも…」
受験者の私語を無視して、試験官は続ける。
「小型は危害を与えるものではない。小型をたくさん破壊してポイント数を稼ぐという方法もあるだろう。ただ、大型を一つ破壊するポイントはかなり高い。小型一つを破壊するポイントとのポイント差は明かさないが、どうやって4時間の中でポイントを稼ぐか、よく考えるように。以上。質問はあるか」
「はーい! 試験番号0256、赤坂登志でーす! ペアで行動すると思うんすけど、4人、あーつまり2ペアで大型を一つ倒した場合って、ポイントはどうなるんすかー」
赤坂登志ーー聞いたことのある名前。
記憶から呼び出そうとしていると、永久さんが隣で呟く。
「確かに他のペアと協力した場合、どうなるか、気になるな」
ひと呼吸おいて、試験官が質問に答えた。
「ポイントは、連携したペアとペアに均等に分配する。3ペアなら三分割、4ペアから四分割だ。」
「あざまーす」
チャラチャラした態度、赤い髪、キリッとした目。
赤坂登志ーートシ。
(人物データ照合:円の舎弟)
幼稚園の頃、円に突っかかっていつも相手にされてなかった一学年上の男子だ。
円に「トシ、うるさい!」とよく言われていたな。
「他にあるか? なければ演習場の扉の前に全員並べ」
ガヤガヤしながら扉の前に移動する受験者たち。
「俺らも行こう」
首を縦に振り、永久さんと歩みを進める。
「よーし! 4時間な! 壊せば壊すほど勝ち……って思うじゃん?」
後ろの声に思わず振り返る。
ーートシか。
ポキポキと腕を鳴らしながら、ココちゃんの周りをフラフラしている。
ココちゃんのペア、トシなのか。
「ココ! 実は罠なんだな〜、これが!」
「最初から分かってるわ」
ココちゃんが冷静に対応していた。
「話がはえーな! この試験に合格するには“大型”の破壊はマストじゃない。1時間で何点取れるかだな」
「大型は、壊すのに時間かかる。例えば、60分かけて一体がいいところね。悪くはないけど、効率的ではないね」
「中型一択だな」
トシとココちゃんが横を通り過ぎ、先の方に行ってしまった永久さんに小走りで追いつく。
このふたりの言う通りだ。
通常、中型なら15分で一体倒せるだろう。
となると、1時間で四体倒せるわけだ。
ポイント数が明かされないにしても、大型を一体倒すより、中型をたくさん倒した方が効率的だ。
このふたり、相当やるな。
トシはわざと点数を抑えたタイプだろうな。
ココちゃんとペアということは、999番で通過しているのだと考えられる。
受験者が並び終えると、試験官が嫌な顔つきでニヤっと微笑む。
「はじめ!の合図で一斉に演習場に入ってもらう。いいな?」
ヘビのようなねっとりした声。
なんだこの違和感。
敏感になりすぎているだけならいいが。
「「「「「はい!」」」」」
勢いよく返事をする受験者たち。
いや、今は試験に集中しよう。
いよいよ、二次試験の始まりだ。
10秒ほど、しんと静まり返る。
「……はじめ!」
周りが一斉に演習場へと走り出す。
永久さんと私は静かに前に進んで演習場へ入った。
きっと考えていることは同じだな。