可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜

プロローグ

 ――ずきずきと頭の奥が傷む感覚があった。

 鈍い音が聴覚を叩いてくる。

(誰か話してる……?)

 そっと目を開けてみると、古い絵画のような光景が目の前に広がっていた。

「取り乱すなんて貴族の令嬢のすることではないわ。妹をみならいなさい」

 五十代に入ったばかりの女性が、汚れたものでも触ってしまったと言わんばかりに手を払っている。彼女は何やら黒いレースの入った赤いドレスを着ていた。

(――はぁ?)

 厭味ったらしい口調で言われて、カチンときた。

 正直、意味が分からなかったが、不快だ。

 今になって初めて自分が床に座り込んでいることに気付いた。それを同じく西洋の衣装を来た細身の中年男性と、少女も見下ろしている。妹、と口に出された際に勝ち誇ったような表情を浮かべていたことから、彼女が本人だろう。

「アイリス・エティックローズ。生贄みたいなものとはいえ、結婚の指名をいただけたのよ。エティックローズ侯爵家に貢献できるようやくの機会を光栄に思うべきだわ。決定は覆りません。すでに二人の婚姻はなされたの」
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