可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 それから間もなくアリムを迎える準備が整った。

 そして彼を呼びに行かせたのだが――。

「さっ、あーんして」
「……私はお腹いっぱいよ。アリムも食べて」
「僕よりもアイリス!」

 アイリスは今、床の上に座って大変困った様子でいた。

 ただ体力が底を尽きかけただけなのに、アリムの指示で掛け布団でぐるぐる巻きにされ、彼のために用意したミニサンドイッチやほかほかクロワッサンを、せっせと口に運ばれ続けている。

「栄養をつけなきゃっ」

(それは糖分よ)

 と頭に浮かんだものの、アイリスはアリムの『看病ごっこ』に付き合って、クロワッサンをまたひと齧りする。

(美味しいわ……)

 食事とは別腹だ。いくらでも食べられそうだった。

 ここにきてから食べることが趣味みたいになっている。美味しい食べ物に胃袋を掴まれている気がして、自分がちょっと情けなく思う。

(大公様も大公様よね。気になって我が子のところに顔を出したのは素敵だけれど、なんで『しっかり看病するんだぞ、お前の役目だ』なんて言ったのかしら)
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