可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「鍵……塔の、牢の鍵は……」
「私が外からかけます。特注のベッドでも置きたいところですが、暴れられた際にはそれがかえって危険になりますので」

 強制的に獣の姿になっている時のヴァンレックは、空腹を感じないという。神獣と同じく衣食を欲しない。

「神獣が始祖と言われても納得してしまいそうですね」
「そうでしょう。ああ、そろそろアリム様を呼びましょうか」

 確かに、とアイリスはブロンズの言葉にハタと時間経過を思い出す。

「わたくしは厨房の様子を確認してまいります。何分、人が少ないもので――護衛をつけてメイドにアリム様を呼びに行かせるとよいでしょう」
「そうするわ」

 アイリスは、メイドたち三人に一緒に迎えに行くよう命じた。

 そして騎士に、本日の建物内の人員配置や滞在人数を聞く。きっと把握しているだろうと思っていたが、その通りだった。

 本日は騎士団全員が出勤し、建物内からその周り、敷地入口までの広大な範囲を巡回するという。

「奥様は、強いですね」
「え? どうして?」
「ブロンズ殿がメイドに行かせて奥様にはここに残っているよう促したのも、心の整理や、ショックで倒れてしまわないか心配してのことでしょう」
「そこまで体力がないわけじゃないわ。……旦那様にはたくさんよくしていただいているもの、私も、私ができることをしたいの」

 できることは何もないにしても、目の前で起こっていることから目をそむける真似はしたくない。
< 200 / 381 >

この作品をシェア

pagetop