可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 間もなくアリムが到着し、朝食が運ばれてきた。

「満月だからしょうがないよ」

 ヴァンレックの説明がうまいのか、彼はそう重くは受け止めていないらしい。アリムは食事を進めながら、満月の日は一人で食べていたと言った。

「あ……でもアイリスが来る前は、部屋に閉じこもっていたからその時の建物内の様子って、あまり分からないんだよね」
「っ」

 そうだった。アイリスが来る前、アリムは『パパ』以外に打ち解けていなかったのだ。満月の時には食事もろくに取らなかったことだろう。

「たくさん食べましょうねっ。旦那様も明日褒めてくれるわっ」
「うん! アイリスがいたら食事はどれもおいしーよ! パパに、二人で三食ちゃんと食べたって、自慢するんだ」

 彼はヴァンレックに似て、女性心を掴む才能でもあるのだろうか。

(大公様って意外と紳士なのよね……)

 思い返して頬が熱くなる。

 けれど――優しさを思い出したからこそ、胸がきゅっと切なくなった。
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