可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「みんなでなんのお話しをしてるの?」
「いや~、アリム様に喜んでもらえることはできないか話していたんですよ。可愛い菓子が出てきたらどうします?」
「えっ、嬉しいよ! アイリスも一緒でいいんだよね?」
「もちろんですよ」

 シーマスを筆頭に男たちが周囲に集まり、会話が弾む。

(そう、これが普通の光景よね)

 討伐に分けて出掛けて、明るいうちには必ず帰ってくる屋敷の主人こと『パパ』。おかげで数日、アリムと彼の帰宅にも居合わせている。

 みんながアリムと接している光景を前にすると、アイリスは、ヴァンレックの場合は何かが足りないような感覚になった。あまり長い時間は一緒にいないので掴めないでいる。でもなんだか、こう、他の大人たちと比べると違和感が――。

 その時、馬の嘶きがした。

 昨日も聞いたのでもう誰か分かる。

 この邸宅に客人は来ない。

 郵便も、だいぶ離れた敷地入口から午前中に屋敷の誰かが運んでくる。

 振り返ると、アイリスが推測した通り黒い軍馬が走る姿があった。屋敷の正面通路を駆けてくるその馬の背にまたがっているのは、ヴァンレックだ。
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