可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 少し遅れて庭園のずっと向こうから、複数の黒い騎馬が見え始める。

「みんなして、どうした」

 ヴァンレックは馬の軌道を変えて向かってくると、そばで停止して馬から降りた。

「パパ! おかえり!」

 アリムが両手で飛び起きて、ヴァンレックに飛び込む。

 文字通りすごい跳躍だ。こいう時、アイリスは彼も獣人族なのだと実感する。

「ああ、ただいま。アリム」

 自分の胸に飛び込んできたアリムを、ヴァンレックは軽々と受け留めた。

 使用人たちが一斉に立ち上がって、一歩身を引いて頭を下げる。

「旦那様、おかえりなさいませ」
「団長、ご無事で何よりです」

 ブロンズに続いて、補佐官のシーマスが慣れたような口調で声をかけた。

「ああ」

 上の空のように答えたヴァンレックの視線があたりを見回し、それからぴたりとアイリスで固定される。

(はっ。ベリーパイに夢中になっていたわ)

 アイリスは素早く手に持っていた皿とフォークを置き、立ち上がった。

「おかえりなさいませ」
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