可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
(俺たちは夫婦なんだが?)

 いや、そうじゃない。

 ヴァンレックは自分の眉間に皺が入ったのを感じて、指で揉み込む。

「俺が心配しているせいか?」

 そのせいで彼女のことを考えてしまうのだろうか。

 アリムが、ヴァンレック以外に信頼がおける人間ができたのは嬉しい。

 彼をきちんと育てるには、ヴァンレックがつきっきりでいられない時間帯に面倒をみられる人間が必要だった。

 それが、まさかアイリスとは思わなかった。

「アリムの〝狼の執着心〟が出なければいいんだが……」

 狼種は、家族以外をなかなか懐に入れることはない。

 相性がよく、受け入れると興味を持ち、最終的にかなり執着する。

 ヴァンレックとしては、アリムが自分以外にあそこまで興味関心を示すとは思ってもいなかった。

 とくに、その相手は『悪女アイリス・エティックローズ』だ。

 だからこの屋敷の誰よりも拒絶反応を出すだろうと思っていたので、帰宅して見たらアイリスと楽しく過ごしていたというのがまず意外すぎた。

「そもそも……彼女は本当に悪女か?」

 初めて話した際の疑問が、口をついて出る。

 結婚相手だと国王から送られてきたエティックローズ侯爵家の長女、アイリス・エティックローズの身上書も読んだ。

 ――大公妃としては失格の女。

 だから国王も最終的に彼女を選んだのだと察せた。

 だが、実際にヴァンレックが見てみた性格はあまりにも違っていた。
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