本当の私を知られたら終わる恋だと思っていたのに、彼の溺愛が止まりません
「じゃあミチルさん。要の両親のことは聞いてるかい?」
「いえ。」
たしかにお祖母様と二人暮らしだとは聞いているけれど、要さんのご両親については何も聞かされてはいない。
「要の花嫁候補なら知っておいて欲しいんだけどさ。」
「はい。」
私は背筋を伸ばした。
「要の母親であたしの実の娘である涼子は、要が五歳のときに病気でこの世を去ったんだよ。若年性のガンでね。気づいたときはもう手遅れだった。涼子は要のことを最後まで心配しながら逝ったんだ。」
「・・・・・っ。」
要さんにそんな悲しい過去があるなんて知らなかった。
私は自分のことばかり考えて・・・
「それはそうと、要の父親、あの男はすぐに他の女と再婚したんだ。相手の女が妊娠したから出来ちゃった婚ってやつだよ。それで要が邪魔になったんだろうね。あたしに要を押し付けて、自分だけ幸せな家庭ってやつを手に入れたのさ。酷い話だろ?」
「・・・そうですね。」
「そんな環境に置かれても、要は泣きごとひとつ言わない、優しくて素直な人間に育ってくれた。それが私の誇りでね。あの子だって本当は淋しかっただろうし、ひとりで泣いた夜だってあっただろうよ。」
・・・でも要さんはお父さんとの思い出を大切にしている。
お父さんを恨まずに生きてきた要さんは、やっぱり優しくて強い人だ。
菊江さんは視線を居間に置いてある仏壇に向けた。
仏壇にはまだ若くて笑顔が優しい女性の写真が飾られ、菊の花が手向けられている。
あれが要さんのお母さんなのだろう。