第3部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
風が、止んだ。

炎も、雷も、叫び声さえも――
まるで世界が一拍、息を忘れたかのように。

「みんな……想いを、重ねて。
私たちの共鳴を――」

そう告げた瞬間、
中央に立つ私の剣先へ、淡い蒼の光が集まり始める。

「……来る」

ディランが、低く告げた。

次の瞬間。


「我が剣に従え――アクアマリン。
流れを凍てつかせ、暴走を鎮めよ」

セナの刀身が氷水の輝きを帯び、
空気そのものを冷却する。

荒れ狂っていた魔力の流速が、確かに鈍った。



「紅く、鋭く――我が想いに応えよ、スピネル!
迷いを断ち、前を切り拓け」

テオの刃が深紅に燃え上がる。
意志そのものが炎となり、前線を押し返した。



「燃えあがれ――ペリドット!
恐れを焼き払い、道を拓け!」

レオの大剣が爆炎を纏い、
轟音とともに魔力の壁を打ち砕く。



「美しく、惑わせ――ローズクォーツ。
その心、甘き夢に沈めなさい」

ルイの剣から薔薇色の光が舞い散る。
幻想の花弁が宙を満たし、敵の視界を歪めた。



「理を整えよ――フローライト。
混沌を律へ、歪みを円環へ」

ユウリの低い声とともに、
淡紫の光が円を描く。

乱れた魔力の奔流が、ひとつの調和へと収束していく。



「……静まりなさい。ムーンストーン。
その痛みを、夜へ還して」

アリスの銃口に、月白の光が灯る。

放たれた魔力は刃ではなく、
安らぎとして仲間たちを包み込んだ。



「加速する――トパーズ!
閃光よ、我が身を導け!」

アレンの足元を雷が走り、
稲光とともに躍る。


「支える力を――スモーキークォーツ。
大地よ、盾となれ」

ロベルトが剣を地に突き立てた。

次の瞬間、
大地の深層を叩くような地鳴りが轟いた。


「静寂を保て。惑いを断て――アメジスト。
恐怖も雑音も、ここには要らない」

レイの剣が静かに振るわれる。

音が、感情が、恐慌が――
戦場から削ぎ落とされていった。
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