第3部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
「次までに、姿勢を直せ。
何十回、何百回もやれ!」
エリックは容赦がない。
「頭にこの本を乗せろ。
絶対に落とすな。
それができるようになるまでだ!!」
……無茶だろ、と思った。
でも――
「わかった」
俺は、言われた通りにやった。
何時間も。
何日も。
特訓の合間をぬって…。
本を頭に乗せて、歩いて、止まって、向きを変える。
落ちたら、最初から。
剣の素振りと同じだ。
地味で、単調で、逃げ場がない。
それでも。
「……なかなか、よくなったな」
ぽつりと、エリックが言った。
「ほんと?」
「エリックが言ったこと、
全部やってる。
毎日、何時間も」
「……あの量を、か」
「あたりまえ」
エリックは、何も言わずに口を噤んだ。
その様子を見ていたオリバー団長が、
ぽん、とエリックの肩を叩いて言う。
「すごいぞ、テオ。
エリックの厳しい指導に耐えて、
しかも“言われた以上”にやっている」
一拍おいて、穏やかに続けた。
「……お嬢様が、そばに置くわけだ」
その言葉が、胸に落ちた。
あたたかくて、
少しだけ、誇らしい。
オリバー団長と、2人きりになる。
周囲の気配が遠のいで、
静かな時間が流れた。
「……だいぶ、様になってきたな」
「そうだと、いいけど……」
「謙遜するな」
オリバー団長は、少しだけ口元を緩めた。
「あのエリックの指導についていける騎士は、
第2騎士団でも多くはない」
「そうですか?」
「ああ。
あいつは、自分にも厳しいが――
他人にも厳しいからな」
なるほど、と納得する。
「でも……」
俺は、正直な気持ちを口にした。
「エリックが言っていたことは、全部正しい」
オリバー団長が、意外そうにこちらを見る。
「実際、ダンスは上手い。
立ち方も、視線も、間の取り方も」
そう言うと、
オリバー団長は小さく笑った。
「……わかっているな」
一歩、間を置いて、続ける。
「厳しい指導を“ただの苦行”で終わらせるか、
“糧”にできるかは、受ける側次第だ」
その視線は、試すようでもあり、
認めているようでもあった。
「お前は、後者だな。テオ」
胸の奥が、静かに熱くなる。
「……どうも」
何十回、何百回もやれ!」
エリックは容赦がない。
「頭にこの本を乗せろ。
絶対に落とすな。
それができるようになるまでだ!!」
……無茶だろ、と思った。
でも――
「わかった」
俺は、言われた通りにやった。
何時間も。
何日も。
特訓の合間をぬって…。
本を頭に乗せて、歩いて、止まって、向きを変える。
落ちたら、最初から。
剣の素振りと同じだ。
地味で、単調で、逃げ場がない。
それでも。
「……なかなか、よくなったな」
ぽつりと、エリックが言った。
「ほんと?」
「エリックが言ったこと、
全部やってる。
毎日、何時間も」
「……あの量を、か」
「あたりまえ」
エリックは、何も言わずに口を噤んだ。
その様子を見ていたオリバー団長が、
ぽん、とエリックの肩を叩いて言う。
「すごいぞ、テオ。
エリックの厳しい指導に耐えて、
しかも“言われた以上”にやっている」
一拍おいて、穏やかに続けた。
「……お嬢様が、そばに置くわけだ」
その言葉が、胸に落ちた。
あたたかくて、
少しだけ、誇らしい。
オリバー団長と、2人きりになる。
周囲の気配が遠のいで、
静かな時間が流れた。
「……だいぶ、様になってきたな」
「そうだと、いいけど……」
「謙遜するな」
オリバー団長は、少しだけ口元を緩めた。
「あのエリックの指導についていける騎士は、
第2騎士団でも多くはない」
「そうですか?」
「ああ。
あいつは、自分にも厳しいが――
他人にも厳しいからな」
なるほど、と納得する。
「でも……」
俺は、正直な気持ちを口にした。
「エリックが言っていたことは、全部正しい」
オリバー団長が、意外そうにこちらを見る。
「実際、ダンスは上手い。
立ち方も、視線も、間の取り方も」
そう言うと、
オリバー団長は小さく笑った。
「……わかっているな」
一歩、間を置いて、続ける。
「厳しい指導を“ただの苦行”で終わらせるか、
“糧”にできるかは、受ける側次第だ」
その視線は、試すようでもあり、
認めているようでもあった。
「お前は、後者だな。テオ」
胸の奥が、静かに熱くなる。
「……どうも」