第3部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
「さて。少し飲むだろう?
良い酒だ」
テーブルに置かれたウィスキーを、ディランがグラスに注ぐ。
(明日は休みか……)
一瞬だけ迷って、頷いた。
「では、一杯だけいただきます」
グラスを受け取ると、
琥珀色の液体が、静かに揺れた。
仕事のこと、騎士団のこと。
他愛のない話をいくつか交わしているうちに、
話題は自然と――お嬢様のことになった。
避けようとしても、行き着く先はそこだ。
「ねぇ、君とティアナの出会いを教えてくれるかい?」
「……気になりますか?」
そう聞き返すと、
「ああ。彼女のことなら全部知りたい。」
続けるように
「ティアナからも聞いてはいる。…だが君の口からも聞きたいんだ」
迷いのない声だった。
隠す気も、取り繕う気もない。
(……本当に、ぞっこんだな)
思わず苦笑する。
まあ――俺も、人のことは言えないが。
ウィスキーが進み、
喉の奥がじんわりと熱を帯びる頃。
俺は、いつの間にか話し始めていた。
お嬢様との出会い。
騎士になる前の、自分。
弱くて、何も持っていなかった頃の話。
こんな話、誰かにしたのは初めてだった。
「へぇ……」
ディランは、相槌を打ちながら、
終始楽しそうに耳を傾けていた。
否定も、遮りもせず、
ただ静かに聞いてくれる。
「それで――
彼女がきっかけで、騎士になったと」
「……はい」
「すごいな」
その一言に、
胸の奥が、少しだけ熱くなる。
(大したことじゃない)
そう思う反面、
認められたような気がして、嬉しかった。
良い酒だ」
テーブルに置かれたウィスキーを、ディランがグラスに注ぐ。
(明日は休みか……)
一瞬だけ迷って、頷いた。
「では、一杯だけいただきます」
グラスを受け取ると、
琥珀色の液体が、静かに揺れた。
仕事のこと、騎士団のこと。
他愛のない話をいくつか交わしているうちに、
話題は自然と――お嬢様のことになった。
避けようとしても、行き着く先はそこだ。
「ねぇ、君とティアナの出会いを教えてくれるかい?」
「……気になりますか?」
そう聞き返すと、
「ああ。彼女のことなら全部知りたい。」
続けるように
「ティアナからも聞いてはいる。…だが君の口からも聞きたいんだ」
迷いのない声だった。
隠す気も、取り繕う気もない。
(……本当に、ぞっこんだな)
思わず苦笑する。
まあ――俺も、人のことは言えないが。
ウィスキーが進み、
喉の奥がじんわりと熱を帯びる頃。
俺は、いつの間にか話し始めていた。
お嬢様との出会い。
騎士になる前の、自分。
弱くて、何も持っていなかった頃の話。
こんな話、誰かにしたのは初めてだった。
「へぇ……」
ディランは、相槌を打ちながら、
終始楽しそうに耳を傾けていた。
否定も、遮りもせず、
ただ静かに聞いてくれる。
「それで――
彼女がきっかけで、騎士になったと」
「……はい」
「すごいな」
その一言に、
胸の奥が、少しだけ熱くなる。
(大したことじゃない)
そう思う反面、
認められたような気がして、嬉しかった。