第3部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
「……わかった」

そう言って、ディランは棚の奥から
明らかに強そうな酒を持ってきた。

嫌な予感しかしない。

そして――
俺たちは飲んだ。

飲んで、
飲まれて、
完全に――酒に負けた。



「……もう、無理です……」

「俺もだ……」

「……引き分けで、いいですか?」

「ああ……」

「その場合、さっきの話はどうなるんです?
 なしですか?
 それとも……2人とも実行ですか?」

ディランは、半目でこちらを見る。

「……ティアナに、何を言ったかは聞きたい……」

「なら、お嬢様に会いに来るの、週1回にしてください」

ふらつきながら、指を立てる。

「貴方、忙しいんでしょう……」

「……わ、わかった……」

「…………」

少し間が空いた。

「……で、なんて言ったんだ?」

「……ティアナが迷ってるなら、
 俺が口説いてもいいって言いました」

そう答えた瞬間――

「はあああ!?」

ディランが勢いよく立ち上がり、
ふらふらと掴みかかってくる。

「お前、ふざけるな!!」

「ふざけてませんよ!
 貴方が追い詰めるからでしょう!」

「そんなに追い詰めてない!」

「王妃にしようとしてるじゃないですか!
 お嬢様、嫌がってます!」

「……わかってる!」

ディランも声を荒げる。

「だから、待つって言ってるだろ!」

わあわあ、と
完全に酔っ払い同士の言い争いになる。

(……気持ち悪い)

「……や、やめましょう……」

「……そうだな……」

2人して、
そのままソファに崩れ落ち、
項垂れた。
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