第3部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
さらに服は増えた。
増えて、増えて、増えすぎた。
ドレス。
ドレス。
なぜか民族衣装。
そして――
「……メイド服?」
「やだ、ちょっといいこと思いついちゃった♡」
ルイのその笑みを見た瞬間、
背筋を嫌な予感が駆け上がる。
そして案の定――
「アリスお嬢様」
「お荷物お持ちいたします」
「ありがとう、ルイ執事」
……え?
「侍女のティアナさん。
ちゃんと着いてきていますか?」
「は、はい……」
なんだこれ。
いつの間にか揃えられていた、
執事服とメイド服。
配役は強制的に決まった。
アリスはお嬢様役。
ルイは執事役。
そして私は、侍女役。
違和感しかない。
……はずなのに。
ルイは妙に様になっていた。
無駄のない動き、背筋の伸びた立ち姿、
完璧な所作。
アリスもまた堂々としていて、
本物のお嬢様と言われたら信じてしまいそうだ。
「こちらへどうぞ、お嬢様」
「ええ」
私は2人の少し後ろを、
控えめに、メイド服でついていく。
……状況は意味不明。
心の中ではツッコミが止まらない。
でも。
楽しそうに微笑むルイを見て、
私は小さく苦笑いした。
――まあ、ルイが楽しそうなら。
今日くらいは、いいか。