第3部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
「ルイ、喉が渇いたわ」
アリスが口を開く。
「かしこまりました、お嬢様。
そちらのカフェに入りましょうか。
スコーンが絶品ですよ」
「いいわね」
完璧な間。
完璧な執事ムーブ。
「行きますよ、ティアナさん」
「……はい」
自然に返事をしてから、はっとする。
(まだやるの!?)
私はメイド服の裾をつまみ、
2人の後をついて歩き出した。
どうやら――
この茶番は、
スコーンが来るまででは終わらないらしい。
店内に入ると、すぐに席へ案内された。
その瞬間――
ルイがさっとアリスの椅子を引く。
「……」
私は反射的に横に立ち、
なぜかルイの隣で待機していた。
「2人とも、座っていいわよ。
一緒に食べましょう」
「ありがとうございます、お嬢様」
ルイは完璧な所作で一礼し、席に着く。
「……ありがとうございます」
私もつられて頭を下げ、腰掛けた。
もうツッコむ気力はない。
「では――
こちらのスコーンと紅茶のセットを、3人前お願いします」
ルイがごく自然に店員さんへ声をかける。
……しれっと注文までしている。
店員さんも一瞬だけきょとんとしたが、
すぐににこやかに頷いた。
「かしこまりました」
――だめだ。
完全に、信じられている。