非道な殺し屋頭領は、甘美な毒で花を欺く
椛が城下町にある団子屋で働き出してから、はや五日。
味は特別美味いわけでもないのに、赤髪の店主の団子屋はやたらと客入りが良い。
『少し休んで行かれませんか? ちょうどできたてですよ』
美貌の店主が暖簾から顔を出して微笑めば、それだけで男も女も足を止めてしまうからだ。
「それでは、わたしは先に店に出ますね」
「待て、椛」
側を離れようとすると、男が椛の腕を掴んだ。
「その指、どうした? 血が出ている」
左手の人差し指から細く伝う赤に、胸がドキッとした。あたりどころか悪かったのか、思ったより切れている。
心配そうに見つめてくる男の切れ長の目。その双眸から視線をはずしながら、椛は必死に言い訳を探した。
椛は咄嗟の嘘が苦手だ。そういうところも、出来損ないと言われる一因だろう。
そのとき、炊事場のほうからカタカタと鍋の煮える音が聞こえてきた。
昼食用に作っただんご汁を火にかけていたのだ。
うっかりしていたが、ちょうどよい言い訳ができる。
「す、炊事場で調理中に切ってしまって……」
うまく誤魔化せるだろうか。
ドキドキしながら答えると、男が椛の顔を覗き込むようにじっと見てきた。