非道な殺し屋頭領は、甘美な毒で花を欺く
「わたしを殺すつもりですか」
「さあ、どうするかな」
ニヤッと笑ってそう言うと、暁が逆手で短刀を握り直す。それから、刀を持った腕を後ろに引いた。
「いずれにしても、殺るなら迷わず一撃で仕留める。少しでも躊躇すればやられるからな」
そう言うと、暁が手にしていた刀を裏庭に面した障子に向かってぶん投げる。
「ぐわっ……」
その瞬間、障子の向こうで男の呻くような低い声がする。
てっきり殺されるのかと思えば、暁が狙ったのは椛とはまた別の敵。驚いて目を見開くと、暁が体勢を低くして椛に顔を寄せた。
「このまま動くな。もう一人いる」
暁が椛に低く囁く。暁の吐息が耳をくすぐり、こんな状況にも関わらず、椛の胸がドクンと鳴った。
ふたりで息を潜めていると、まもなく障子がカタンと音を立てる。向こうも向こうで、こちらの出方を窺っていたようだ。
障子が少し開いた瞬間、暁が着物の袖から細い針のようなものを取り出して投げる。それが何かに刺さる音がして、低い悲鳴とともにドサッと鈍い音がした。
そのあとは、もう何も聞こえない。暗い部屋の中ですべての音は消え、ただ椛の鼓動だけが激しく主張するように鳴り続けている。
暁が仕留めたのは、どこの手の者だったのだろう。
椛以外にも、黒羽の赤鴉を狙う者がいたのだろうか。それとも――