非道な殺し屋頭領は、甘美な毒で花を欺く
「おまえは期限内に俺を殺せなかった。任務を失敗したら、不知火には戻れないんだろう。家業の秘密を知っているおまえを、不知火がこのまま野放しにしておくと思うか?」
「なぜ、そんなことまで知っているの?」
「任務を確実に成功させるため。さて、椛。おまえはどうする?」
ふっと目を細めると、暁は椛の手に短刀を握らせた。椛から奪った短刀だ。
鈍く輝く刃には、彼岸花の花弁が一枚張り付いている。
鮮血のような赤。それを呆然と見つめていると、暁が短刀を持つ椛の手に手を添えた。
「もしおまえが今からでも任務を遂行させるつもりなら、俺も戦わなくてはいけない。俺は毒の異能で殺す。椛を傷付けるのは死ぬほど辛いが、おまえはきっとこの世で一番美しい花になるだろう」
そう言って、暁がまなざしを鋭くさせる。
さっき見た、彼岸花を切り落とす暁の姿。真っ赤な鮮血のように飛び散る花弁。
異能で花に変えられた自分が切られるところを想像すると、身体が震える。
毒の異能とはどういうものなのだろう。痛く苦しいのだろうか。
けれどこのまま暁を殺さず逃げれば、椛は今度は不知火から追われる身となる。暁の言うとおり、家業の暗殺任務に少なからず携わってきた椛を不知火が放っておくはずはないのだ。
それならせめて、最後の悪足掻きくらいはしなくては――