非道な殺し屋頭領は、甘美な毒で花を欺く
心を決めると、短刀を握る手に力を込めて振り上げる。
そのとき、
「ああ、そうだ」
暁がふと思い出したように口を開いた。
「最後に伝えておくが、椛の母を殺したのは俺じゃない」
「え……?」
いざ心を決めたところだというのに、間が悪い。これだって、きっと椛を油断させるための策のうちだろう。
黒羽の赤鴉は、最低最悪の殺し屋だ。
わかっているのに、短刀を振り上げた手が止まる。
「そんな嘘には騙されません……」
「嘘じゃない。あの夜、俺が不知火に忍び込んだときにはもうおまえの母親は他のやつに殺られてた。そいつがおまえにも手をかけようとしたから、俺が邪魔に入った。そいつは逃げだが、のちに捕まっただろう?」
「なにを言っているの……」
暁の話は嘘だ。椛には彼に助けられた記憶などない。
あるのは、椛を庇った母から散った血の赤と、倒れたの母の向こうに立っていた少年が夜の闇の中で燃える炎のように赤かったこと。