胡蝶の夢を貴方と
「あら嫌だわ。わっちはもう二十歳になるというのに……」

若紫は落ち着こうとしたものの、一度龍之介のことを考えると胸の鼓動は止めることができない。今夜、龍之介と再び一夜限りの夫婦になれることを願い、若紫は布団に戻った。



夜になると吉原は昼間よりも人で賑わい、眩いほどの色香を放つ。遊女たちが窓の近くに立ち、客に買われるのを待っている。若紫も身支度を始めた。

禿に手伝ってもらいながら、若紫は重く豪華な着物に袖を通す。複雑に結い上げられた髪にいくつもの簪を飾る。

「姉さん、今日も綺麗!」

「お化粧するんでしょ?私も手伝う!」

吉原に来たばかりの幼い禿がはしゃぐ。若紫は禿の頭を撫でる。自分も同じようにはしゃいでいた時があったなとふと思い出した。

「もう支度はいいからご飯を食べておいで」

「は〜い!」

禿たちが部屋を出ていく。若紫は机の引き出しを開け、化粧品を取り出して顔につけていく。鮮やかな赤い紅を唇に塗った時だった。
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