胡蝶の夢を貴方と
「こんなにも虚しいものなんだねぇ」
若紫は息を吐き、机の引き出しを開ける。そこには龍之介から貰った簪が眠っていた。それを取り出し、若紫は「龍之介様……」と名前を呟く。それだけで、若紫の胸が切なく鳴った。
「姉さん!お客様が来たよ!」
禿の一人が駆け寄ってくる。花魁・若紫の最後の夜の客が来たのだ。若紫は胸の中の切ない痛みを堪え、笑みを作る。
「ありがとう。行ってくるよ」
素足で冷たい廊下を歩く。一歩を踏み出すたびに若紫は自分自身に言った。
(わっちは花魁。人に夢を与えるのが仕事。好いていない殿方のものになってしまうなんて、客にとっては関係のないこと。気張りんす)
襖の前で若紫は座り、紅の塗られた唇を動かす。花魁としての最後の仕事だ。
「失礼致します」
襖を開けた先にいた人物を見て、若紫の目が見開かれた。目の前が熱くなり、溢れ落ちそうになるのをグッと堪える。目の前にいる龍之介に対し、若紫は頭を下げた。
「ようこそおいでくんなまし。龍之介様」
若紫は息を吐き、机の引き出しを開ける。そこには龍之介から貰った簪が眠っていた。それを取り出し、若紫は「龍之介様……」と名前を呟く。それだけで、若紫の胸が切なく鳴った。
「姉さん!お客様が来たよ!」
禿の一人が駆け寄ってくる。花魁・若紫の最後の夜の客が来たのだ。若紫は胸の中の切ない痛みを堪え、笑みを作る。
「ありがとう。行ってくるよ」
素足で冷たい廊下を歩く。一歩を踏み出すたびに若紫は自分自身に言った。
(わっちは花魁。人に夢を与えるのが仕事。好いていない殿方のものになってしまうなんて、客にとっては関係のないこと。気張りんす)
襖の前で若紫は座り、紅の塗られた唇を動かす。花魁としての最後の仕事だ。
「失礼致します」
襖を開けた先にいた人物を見て、若紫の目が見開かれた。目の前が熱くなり、溢れ落ちそうになるのをグッと堪える。目の前にいる龍之介に対し、若紫は頭を下げた。
「ようこそおいでくんなまし。龍之介様」