【書籍3巻発売中】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック3巻発売中】
 井戸の冷たい水を汲み上げて顔を洗い、小屋で古びている柔らかな布で体を拭いた。

 いつもより、入念に。あの竜騎士の前で少しでも綺麗な自分で居たいと、自然に思ったから。

 花の種から生花を咲かせるのは、そう魔力は使わない。

 ただ、慎重にせねば失敗してしまうために時間はかかってしまう。 

 どうしても急いてしまう気持ちを抑えながら、花を咲かせていつも通りの本数を揃えた。

 そして、大きな籠に順序良く入れると小屋を出て心を浮き立たせながら目的の広場へと急いだ。

 あの竜騎士にとっては、ここは敵地だ。

 心を許せるものなど、何ひとつないだろう。けれど、ほんの少しだけでも良い。彼の目に映ることが、出来たなら。

 どれだけ、嬉しく思ってしまうのか、スイレンは自分にも想像出来なかった。

 早足で大通りを進むスイレンの心の中には、ただただ彼に会いたいと浮き立つような気持ちだけが溢れていた。
 
 スイレンの目には、やがて王都には似つかわしくない、異様な威圧感を放つ大きな鉄の檻が映った。

 昨日からこの場所で捕らえられているリカルドは勿論、今も檻の中に居た。

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