【書籍3巻発売中】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック3巻発売中】
 リカルドと婚約者の姿が見えなくなってから、胸に抱き締めていた書類袋に皺が寄りそうなくらい強い力を込めていたことに気がついて、スイレンは慌てて紙の皺を伸ばした。

 一人で季節に似合わない花が咲き誇る美しい庭園に立ちながら、ひどくみじめで嫌な気分だった。

 リカルドは、こうして婚約者と会っていた。二人は貴族同士で城近くに住んでいるのだから、イジェマと会うのにはここが都合良いのかもしれない。

(ああ……そうか)

 スイレンは、何かすとんと胸に落ちたような気がした。

(私は、彼を好きなだけで、それだけで良いと思っていた。でも、それは彼にとって迷惑になるのかもしれない)

 スイレンは何もかもを与えてくれるリカルドに対して自分は何も望んではいけないのだと、きちんと理解していた。

(いつか言ってくれた、もう少ししたら言いたいと言っていたことも、あの彼女と結婚するから……家を他に用意するから、何処かに出ていってくれとそういうことだったのかもしれない)

 スイレンの頭の中には、リカルドとイジェマが二人で親し気に喋りながら歩いていく姿が焼き付いて消えなくなってしまった。

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