【書籍3巻発売中】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック3巻発売中】
「ほら。この書類を見て。ようやく、これでおしまいなの。私も、嬉しいわ。それでは、ごきげんよう」

 イジェマはひらひらと何枚かの書類を見せて、それでも何の反応も見せないスイレンを見て、何を思ったのか、にっこりと満足げに微笑むと紋章付きの馬車へと乗り込んで行く。

 カラカラと車輪の回る軽快な音がして、スイレンは動けずに彼女が去っていくのを呆然と見守った。

(嬉しいって、どういうこと? もしかしたら、もう結婚が決まったから、私とリカルド様の仲を精算しろって……そういうこと? だから、嬉しいのだろうか。もう、自分の邪魔者は、いなくなるから)

 イジェマの意味深な言葉の意味を考え、スイレンは両手をぎゅっと握り締めて俯いた。

(あの人は、誤解しているのね。仲も何も……私とリカルド様の間には、何もない。そう、何も)

 本当に、悲しいくらいに何も言われていない。

 一緒に住んでいて、共に居る時間が長いから、ふとした瞬間視線が絡んだりすることもあった。けれど、視線を逸らすのはいつもリカルドの方だ。

 痛む胸を押さえたスイレンは、回れ右をして馬車に乗り込んだ。

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