【書籍3巻発売中】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック3巻発売中】
(……あの人間共の集団は、確かに騒がしい。うっとおしいから、追い払えるのなら協力してやっても構わない)

 それまでずっと、冷静沈着な様子に見えていたクライヴが、大きく息を吐いた。

 スイレンも両手を握りしめて、ただ感謝した。圧倒的な力を持つ、恐ろしい存在に。彼の持つ大きな手の一捻りで殺してしまえる程の、矮小な存在の願いを叶えてくれた、その奇跡のような気まぐれに。

「願いを叶えて頂き……心より、感謝を申し上げます。必ずあの集団は姿を消すように、迅速に処理します」

 クライヴが言ったその時。確かに、周囲の空気が変わった。

 何かすっと冷たいものが身体中に走って、弾けるように清涼な空気が周囲に満ちていく。今まで感じていなかったのが不思議なくらいの、何かの圧から解放されたのだ。

(さあ、行け。古き魔法を使う人間。約束は、一日だけだ)

 頭を下げたクライヴは、スイレンの手を取って洞窟の入り口へと向かって走り出した。

 早く早くと駆ける心が、抑えられない。ズキズキと痛む足も、もうとうに尽きてしまっている体力も関係なかった。

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