【書籍3巻発売中】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック3巻発売中】
 もしかしたら、気が付かぬ内に木の枝に引っ掛けてしまっていたのかもしれない。お湯でさっと流すと一気に汚れが落とされて、ようやくすっきりすることが出来た。

 湯が白く濁る入浴剤を入れて、花の匂いで浴室の中は満たされた。温かな湯の張られた大きな湯船に浸かり、気分も良く自然と歌を歌う。

 浴室では声が良く響き、普段の自分より上手く聞こえてしまうせいもあるかもしれない。

 ガヴェアで花娘を生業にしていた頃は、祭り用の歌を何個か歌えた。時々歌わなければ、すぐに忘れてしまう。

 その理由が何故かという理由はスイレンは知らないが、恋を歌った歌が多い。祭り中は恋人や配偶者などに、花を買っていく場合が多いせいもあるだろう。

「……スイレン?」

 戸の向こうからリカルドの声がして、驚いたスイレンは慌てて歌うのをやめた。思わず夢中になって歌っていたのが、彼に聞かれていたと思うと無性に恥ずかしかった。

「スイレン。入って良いか?」

「リカルド様?」

 彼のまさかの質問に、スイレンが唖然としている間にリカルドが浴室の戸を開けた。

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