【書籍3巻発売中】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック3巻発売中】
 別にその書類がなかったとしても、多少時間が掛かってしまう程度の話らしいが、あった方が滞りなく進む。それなら、飛んで行けばそんなに時間はかからないから、取りに行こうとリカルドが言い出した。

 ヴェリエフェンディとガヴェアの二国間にある一触即発の状態は続くものの、国境近くにある辺境の街で手続きを済ませてしまえば、特に問題も起こらないだろう。

 早朝の空気は、肌寒い。

 もう寒い季節だから風邪をひかないようにと、あれもこれもと着せられてもこもこの姿になってしまっているスイレンだが、剥き出しの顔にひやりと突き刺すような風が触れた。

 この国へとやって来てこうして竜に乗って飛ぶのは、既に慣れてしまっていたが、地上を飛び立つ瞬間の高揚感は、何物にも代え難い。

「……寒い?」

 心配性のリカルドはスイレンの腰に逞しい片腕を巻きつけたまま、後ろから聞いた。首を振ってスイレンが微笑むと、彼も優しく目を細めた。自分を抱きしめている腕に、力が入るのを感じた。

 スイレンは真っ直ぐに前へと向き直り、どんどんと小さくなっていく王都を見下ろした。

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