【書籍3巻発売中】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック3巻発売中】
 リカルドは迷うことなくその腕輪を素早く身につけると、彼らの会話の意味を理解出来ずに戸惑っているスイレンの腕に腕輪を通しながら、優しく耳に囁いた。

「……心配しなくても、大丈夫だ。君の体は今のままでは、竜が本気で飛ぶ速度に耐えられない。この腕輪は、それを強化するための魔法具だ」

 魔法具。それは魔法の効果を、そのままに封じている道具のことだ。どんなに小さな魔法だとしても、庶民には目が飛び出るような高い金額がするものだ。

 それをこともなげに飛びながら投げて渡すブレンダンにも驚くが、良くわからない立ち位置の自分に、そんな貴重なものを使ってしまって大丈夫なのだろうか。

 リカルドは戸惑い黙ったままのスイレンの腕に腕輪を通すと、騎乗している赤い竜ワーウィックに言った。

「行くぞ。ワーウィック。ヴェリエフェンディの王都まで、最速で飛ばせ」

 彼の言葉が終わらない内に、ぐんっと後ろに引っ張られるような力を感じてスイレンはリカルドの胸に頭をぶつけた。

 周囲の景色が、色だけを残して溶けていく。

 それは決して比喩ではなく、初めて見る不思議な光景に驚き、スイレンは目を瞬いた。

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