【書籍3巻発売中】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック3巻発売中】
(知っていたのに)


「スイレンちゃん。ごめん。僕のせいだ。見たくないものを見せてしまったね」

 スイレンの様子に顔色を変えたブレンダンは、慌ててスイレンの手を引き寄せ広場の出口へと歩みを進めた。

 我らが英雄の無事な姿を見に、前方へと進みたい人が多いせいか。反対方向へ向かう分には、道を空けてくれて出口に進むのは楽だった。

 ようやく人目のない小部屋にまで辿り着くと、ブレンダンは困った顔をした。涙が止まらないままの、スイレンの事を見やった。

「……あいつのことが、本気で好きなの?」

 ブレンダンは、揶揄うでもなく真面目に聞いた。スイレンは何度か頷いて、彼の質問に肯定で答えた。

 そんな様子を見て、ブレンダンはふうっと大きく息をついた。

「辛い恋になるよ。リカルドは貴族だし、こうして英雄と呼ばれているくらいに国民からの注目度が高い。それに、さっき見たイジェマはあいつが幼い頃から決まっていた婚約者だから……もしかして。ガヴェアに居る時に、あいつから何か将来の約束を貰ったの?」

 緩く首を横に振って否定したスイレンを見て、ブレンダンは嘆息した。

< 53 / 340 >

この作品をシェア

pagetop