【書籍3巻発売中】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック3巻発売中】

1-8 蜜蜂

「良いか。テレザが帰ったら、誰が来てもドアを開けないこと。特にブレンダンは絶対に、駄目だ。わかったな?」

 リカルドはそう言い残すと、時間もそう残されていなかったのか。ワーウィックに飛び乗って、城へと帰ってしまった。

 みるみる高度を上げて、青い空を飛んで行く竜をほうっと息をつきながら見守る。日差しが強くて、思わず手で目に影を作った。

(きっと……あの人は、社交辞令で褒めてくれたんだとわかってるのに)

 でも、それでも、とても嬉しくて。知らず、笑みが溢れてしまう。

 本当にスイレンの気分は上がったり下がったり、まるで気まぐれな蜜蜂が飛んでいる軌跡のようだ。心の中が、忙しい。

 リカルドには、美しい婚約者が居る。それはわかっていた。でも、少しでも彼に綺麗になったと、外見を褒めてもらえるのは、とても嬉しくて。

「スイレンさん、おかえりなさい。まあまあ……まるで、貴族のお嬢様じゃないか! こっちに来て、良く見せておくれ」

 家の中で洗濯ものを畳んでいたテレザは、お洒落をしたスイレンを、手放しで褒めてくれた。

「テレザさん。ありがとうございます。忙しいところすみません。私……着替えたくて。脱ぐのを手伝って貰っても、良いですか?」

< 65 / 340 >

この作品をシェア

pagetop